2021-09-23

ミキハウスグループ代表・木村 皓一の「世界の子供に笑顔と安心を!」(第21回)

ベビー服・子供服はもちろん、最高品質の靴をつくりつづけている



子供靴を軌道に乗せるまでの30年間のコスト



 一つの事業を軌道に乗せるのに、「川上から川下まで全体のバランスを見て」事業の仕組みをつくりあげてきた木村。

 だから、こうした事業構造や仕組みをつくりあげてきた歳月やノウハウを考慮せずに話をしてくる人たちに対しては怒りに似た感情を覚えるという。

 こんなことがあった。

「某有名百貨店から『わたしのところにオリジナル商品をつくってくれないか』という話が来たんです。それが、たかだか5枚、10枚の単位。わたしは即座に『それ1枚300万円とかで売るということ?』と聞き返したんです。それくらい、わたしたちの商品はコストがかかっているということなんですよ」

 木村が次のように続ける。

「糸から生地をつくるわけですが、最低ロット(量)は1色6反です。3色つくったら、18反要りますねん。それで5枚つくったり、6枚つくったりしますでしょ。あとは捨てないといけなくなるから、1枚300万円で売らないとコストが合わない」

 やや専門めいた話になってきたが、木村としては、相手方がコスト計算をしないうちに、自分たちの都合でモノを発注してくる“傲慢さ”に我慢がならないといった様子である。
「車1台つくるのに約5千億円かかるという話なんです。スマートフォンだって10億個とかつくるから今の値段で売れるのであって、1個しかつくらないなら値段は100億円になるわけでしょ。そういう類の話であって、スマホもここまで来るのに試作機も含めて、何万個の試行錯誤を重ねて、今の安定したスマホになっている。もう理屈が分かっていないんですよ」

 ものすごい量をつくり、試行錯誤を重ねてきているから、今のミキハウスの商品が存在する。そうしたモノづくりへの執念、使命感があるからこそ、自分たちの事業が成り立つ――という木村の思いである。(敬称略、以下次号)

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