2021-09-17

東京海上ホールディングス社長が語る「我々の事業の成長は社会課題の解決によってのみ実現する」

小宮暁・東京海上ホールディングス社長

創業140年以上変わらぬパーパス


 ─ 今はコロナ禍、多発する自然災害など非常にリスクが多く、変化の激しい時代です。その中で改めて東京海上ホールディングスのパーパス(purpose=存在意義)をどう考えますか。

 小宮 当社は今年で創業142年ですが、やはり我々のビジョン、パーパスに戻ることが大事だと考えています。

 我々のパーパスは社会課題の解決を通じて、お客様の「いざ」を支えることです。この「いざ」には、例えば事故や災害があった時に、明日からまた復旧していこうという「いざ」と、明日にチャレンジする、まだ見ない世界、道を切り拓いていく時の「いざ」があると思います。

 安全を提供して安心を広げることで、お客様の「いざ」を支えていく。「世のため人のため」といいますか、そうした活動を通じて、世の中にとってなくてはならない会社になるということが、140年以上変わらぬパーパスです。

 今、世界46カ国・地域に約4万3000人の従業員がいますが、このパーパスをグローバルで、1人ひとりの社員にどう浸透させ、実現していくかが大事になります。

 ─ パーパスの実現に向けて、どう取り組んでいますか。

 小宮 グループ内では「パーパス・ドリブン経営」と言っています。

 上司の指示や命令では、それを出している人を超えることはできませんが、パーパスを成し遂げるんだという思いが強ければ天井やゴールなく超えて、その先に行くことができます。今、そこに最も力を込めて仕事をしているところです。

 ─ 前身の1社である東京海上保険会社の設立には「日本の資本主義の父」と呼ばれる渋沢栄一が関わっているわけですが、改めて渋沢翁の考え方をどう捉えていますか。

 小宮 先程の話とも関連しますが、私達の事業の成長は社会課題の解決によってのみ実現しますから、両者は一体となっています。チャリティやCSR(企業の社会的責任)も大切ですが、ハーバード大学教授のマイケル・ポーター氏が提唱しているCSV( Creating Shared Value =共通価値の創造)のように、本業に注力すればするほど、世のため人のために役立っていく方向にビジネスをフォーカスしてきた142年だと思います。

 元々、海運業の船荷を補償する仕事からスタートしたのも、日本の貿易をどう支えるかということだったと思いますし、日本に自動車が1000台ほどしか走っていなかった1914年に、日本で初めて自動車保険の営業認可を受けました。

 さらに、1989年には介護費用保険をスタートさせました。少し早かったこともあり、ものすごく売れたという保険ではありませんが、社会課題とは何なのか、その中で我々が一番お役に立つ領域はどこであるべきかを常に考えてきたのです。

 ─ 本業を通じて社会に貢献する。「私益と公益の高い次元での両立」を図った渋沢の精神に通ずるものがあると。

 小宮 そうですね。ただ、社外取締役である日本商工会議所会頭の三村明夫さんにも言われますが、「言うは易し行うは難し」です。しかし、これまでも取り組んできている会社ですし、不確実な時代だからこそ、その原点に戻ることが必要ではないかと考えています。

 原点に戻るという意味合いも込めて、21年4月にグループサステナビリティ委員会を創設、グループCSUO( Chief Sustainability Officer)を置いています。

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