2021-09-21

リスク過多の今に新しい保険業!【東京海上HD・小宮暁】の「顧客の『いざ』を支えるソリューションを!」

東京海上ホールディングス社長 小宮 暁



グループの〝統治〟も新しいステージへ

 海外比率が5割を超えようとする今、そのグループマネジメントも、「もう一段ギアチェンジしていく」と小宮氏は語り、「いろいろなコーポレート機能についての機能の強化ですとか、グローバル化みたいなことを果たしていかなくてはいけない所に来ている」という認識を示す。

「例えばサイバー保険のヘッドというのは、今、ロンドンにいるわけですね。資産運用のヘッドは日本にもいますけど、共同総括でニューヨークにもいます」

 今は、海外事業総括を日本に置いているし、共同総括としての責任者が米国にもいる。

 また、『アクチュアリー』といって、確率・統計などの手法を用いて、不確実性の分析や評価などを行う専門職のヘッドはニューヨークにいるなど、〝分散〟化している。

 ビジネスリスクの分散を図る─ということで、M&Aを進めてきたわけだが、それは〝本社機能の分散〟にもつながってきた。利益面で海外比率が5割を超えるのが間近な今、コーポレート・ガバナンス(統治)も新しい局面を迎えたという小宮氏の認識。では、どう手を打っていくのか。

「やはり、グループの中で最も専門性を持っている人間に、グループ全体の政策をリードしてもらうというのが基本的な考え方です」と小宮氏。

 責任体制を今一度、明確にしてグループ全体のコーポレート機能を強化しようという考え。

多様性の化学反応で

「多様性は、成長戦略の一丁目一番地」─。小宮氏は新中期経営計画で、「新しいアプローチ、新しいマーケット、新しい事業を作っていく」と謳い、その際、キーワードとして『多様性』を挙げる。

「多様性の化学反応みたいなことが必要です。その多様性の中で良い仮説を作っていく。仮説が出来たら、スピード感をもって実行に移す。それがうまくいった場合に速い展開をしていく。うまく行かなかったら、『さあ、また次に行くぞ』という、この動きを速くしていく」

 こうした考えの下、小宮氏は『D&I(Diversity and Inclusion、ダイバーシティとインクルージョン)』という名の政策を揚げる。

 国籍、性の違い、それに若手や年配といった世代の違い、また価値観や国・地域の違いもある。そういう違いや差がある中で、グループ一体経営をどう推進していくかという問題意識からの『D&I』政策である。

 Diversity(ダイバーシティ)は文字どおり、多様性を示す。Inclusion(インクルージョン)は相手の存在や考えを包み込む力、包容力といった意味。

「ダイバーシティとインクルージョンは、グループ一体経営を強化していく上で不可欠なものであるし、また世の中全体の大きな流れもそうだと思います」

 小宮氏は『D&I』ポリシーを取り上げた理由をこう述べ、次のように語る。

「この母国市場の東京海上日動について見ても、まだまだジェンダーギャップがあります。その改革に取り組んできてはいますけれども、まだまだスピードを上げていかなければならない所にあります」

 そこで、小宮氏は今年4月、〝チーフD&Iオフィサー〟を設置、そのポストに女性の執行役員、鍋嶋美佳さん(1991年6月入社)を任命。こうして多様性を活かす態勢づくりが進む。

安全・安心を拡大

 今は、まさに時代が大きく変わろうとする変革期。デジタルトランスフォーメーション(DX)が進行する一方、世界全体を見れば、政治的に米中対立、アフガンの混乱と混迷が続く。さらには中東各地域での内戦・内紛も頻発。また米FRBの金融政策のカジ取り一つで、株価が敏感に反応、通貨も揺れる。

 こうした世界の政治、経済の不安定要因に加えて、地球環境問題にどう対応するかという課題。異常気象による山火事、台風、水害による河川の氾濫、土砂崩れ、農作物の被害とリスクが高まる日々。これらのリスクとどう向き合っていくかという社会的課題である。

「やはり、リスクが増大している。だから、われわれが社会課題の解決に対して役に立つ領域というのは、もっともっと実は大きいはずだと。安全を提供して安心を広げる。それが保険だと言っていますが、保険というのは経済的補償に過ぎません。経済的補償自体はとても大事なことなんですが、『いざ』を支えるためには、いつも支えていないと、『いざ』は支えられないのではないかと。そのために、テクノロジーの活用もあるわけですが、要するに事故はない方がいい。あっても、ダメージが小さい方がいい。事故が起こりましたと。でも、それは二度と起こらない方がいい」

 社会課題の解決へ向かう時の本質論を小宮氏はこう語り、これからの保険(業)の役割と使命について、次のように深掘りする。

本誌主幹 村田博文

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