2021-09-10

元防衛大臣・森本敏が語る「アフガニスタン情勢と日本につきつけられた教訓」



日本のアフガン戦略が問われている



―― これは日本政府も同じですね。

 森本 日本には、ある国の政府ができた時に、その統治主体が正当な政府かどうかを認定する政府承認という制度があります。つまり、クーデターなどで新しい勢力が入ってきて、どこかの国を統治しようとしたときに、正当な政府であるかどうか閣議で決めます。

 これは大事なことで、相手が正当な政府だと承認しなければ外交関係は勿論のこと、経済協力もできない。だから、タリバンがアフガンの正当政府を作り、国を統治し、国家予算をどうするか、法に基づく秩序や人権などの価値観を守っていくのか、ということが政府承認の判断基準になります。

 その時、日本はどのような判断をするのか。おそらく、米国は協議の中心になっても、アフガンにほとんど関心が無いので、日本は欧州と協調していくことになる。アフガン政府を承認するのか。それが次の焦点になるでしょう。

 ―― 日本のアフガン戦略が問われていると。

 森本 日本はこれから自民党の総裁選と衆議院選挙という2つの選挙を抱えています。その後に組閣ということになるので、実質的には来年の作業になる。国家の安全保障戦略見直しの作業を急ぐべきでしょう。

 ただ、その間に仮に台湾で緊張事態が発生したらどうなりますか。台湾もジワジワ危機意識が高まっていて、中国が周辺海域に出てきて、領空侵犯も何度も繰り返している。

 中国には本格戦争する準備はまだできていないと思いますが、台湾シナリオの第一段階が始まっていると言っていいのではないでしょうか。

 アフガンで分かったように、米国は自国で自分たちを守ろうとする気概のない国民と国家を守る気などありません。日本はこれからどうするのかを考えると、アフガン問題は遠い地域の話ではない。日本も自国のこととして突き付けられている話なのです。

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