制度が整えばワクチンも治療薬も年度内に
─ そうなれば行政や医療の混乱が緩和され、現場の負担も軽減できますね。
手代木 はい。
わたしどもとしては、当初はいくらかの混乱もあると思いますが、ワクチン接種が進み、免疫のレベルが少しずつでも上がる人が増える中で、感染者に対する治療法として、経口薬ができれば、インフルエンザとかなり近い環境で皆様方に安心をご提供できるのではないかと考えています。
緊急事態宣言下でも感染者が増え、国民の方々に負担や我慢を強いる状況が続いていますが、それも限界に近付いて、なかなか人流のコントロールだけで、感染症をコントロールすることが難しくなってきているのだと思います。
そうなると、何らかの新しい方向性が必要になると思います。
それは、現在進んでいるワクチン接種を進めることや、安全性の高い経口の抗ウイルス薬の開発を進めることだと考えています。
─ 塩野義が今、開発しているワクチンの開発状況は?
手代木 ワクチンは今のところ、9月の後半位から国内で3000例規模の臨床試験を進め、別途グローバルで最終段階の試験を年内に開始できるように準備を進めています。
治療薬とワクチンの開発を同時に展開していこうと思っています。
ワクチンは、どの企業も苦労されているところがありますが、われわれは国産ワクチンでも、グローバルに通用する安全で有効なものを作りたいと思っています。
ただ、ファイザーやモデルナのワクチンは有効率90%以上という今まででは考えられないような高い数字を出しているので、これから開発するワクチンは安全性も優れ、かつ有効性も高いものでなければいけません。
そうしたハードルの高さから、ワクチンの開発は当初考えていたよりもタイムラインが遅れていますが、メッセンジャーRNA並みの中和抗体ができるものができています。
あとはどれだけ早く仕上げることができるかなので、スピードを上げて、厚生労働省、政府からご要望いただけるのであれば、ワクチンも治療薬も年度内には皆様方にお届けできるようなタイムラインで開発を進めていこうと思っております。
─ ワクチンは海外勢が先行しましたが、経口治療薬の開発状況はどうですか?
手代木 世界では、メルクとファイザーがわれわれよりも少し先をいっています。われわれの薬はウイルスが増殖するために必要とする酵素を阻害することでウイルスの増殖を抑えるのですが、安全かつ有効で、投与量や投与回数も少なく済む可能性があるということで、先の2社との差別化も十分可能だと思っています。