2021-09-07

【経団連会長・十倉雅和】のサステナブルな資本主義・市場経済を!

日本経済団体連合会会長 十倉 雅和



日本が先頭を切って手本を世界に…

 どんな制度、主義にも完全なものはない。時代や環境の変化に対応して、手直しをしていく必要が出てくる。

「だから、われわれはこれをつくり直さなければいけない。それはやはりサステナブルな社会、サステナブルな地球ということ。その中で生きられるサステナブルな資本主義、市場経済をもう一回、僕らは構築しなければいけない」

 これまでも資本主義や社会主義という考え方を超えて、社会的共通資本(social overhead capital, social common capital)という概念の必要性を強調してきた宇沢弘文氏(故人)らがいる。

「ええ、ホモ・エコノミクスという概念から出発した市場原理、自由放任主義ではやはり解決できない問題があると。地球の生態系の保持、大気や水、土地などの資源、それに教育制度や医療制度などは市場原理になじまないし、これらは社会的共通資本という考えで対応していくと。公益性とかパブリックという考えですね」

 サステナブルな社会をつくる上で、日本の使命とは何か?

「これは日本だけの問題ではなくて、世界全体の問題ですけれど、これも多くの方が言われますように、日本というのは割とそういう、株主価値一辺倒でやってきた国ではないんですね。

三方良しの考え方とか、わたしの出ている住友グループには『自利利他公私一如』という事業精神があります。住友の事業、住友を利するだけであってはならない。広く地域、社会、国家を利するものでなければならないということを言っていますし、三菱グループさんには、(所期奉公、処事光明、立業貿易の)三綱領というものがあります。日本の企業はそういうことでやってきた。だから日本は長寿企業が多いんです」

 一方で、不祥事が無くならないという現実もある。そうした現実を直視しながら、新しい秩序を追求していくということ。

 米国の経済人たちも、株主第一主義から、マルチステークホルダー主義に“修正”し始めている。世界で変革が進む中、「日本は先頭を切って手本を見せていかないといけないと思います」と日本の文化になじんだ価値観を世界に発信するときという十倉氏。日本及び経済人の真価もまた問われている。

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本誌主幹 村田博文

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