2021-09-07

【経団連会長・十倉雅和】のサステナブルな資本主義・市場経済を!

日本経済団体連合会会長 十倉 雅和

「サステナブル(持続可能)な資本主義、市場経済を目指す」─。コロナ禍に加えて、格差、異常気象・生態系の破壊など地球規模で課題が広がる中、「常に社会性の視座を念頭に企業経営をやっていく時代」と日本経済団体連合会会長・十倉雅和氏(住友化学会長)は強調。経団連会長就任は今年6月。前任の中西宏明氏は闘病中で、「あとをよろしく頼む」と託されたのは4月中旬。中西氏は薬石の効なく、6月末逝去したが、「日本はこのままではいけない」という危機感を持ち続けた経済リーダーであった。後を託された十倉氏は「思いは全く同じです」と“サステナブル”や“社会性”をキーワードに、新しい社会の仕組み構築に意欲を燃やす。出身母体の住友グループには、『自利利他公私一如』、三菱グループにも『所期奉公』などの三綱領がある。米国も株主第一主義を見直すなど、世界的に新しい潮流が起きつつある中、日本の立ち位置と経済人の果たすべき役割とは。

東京五輪から何を感じ取るか?

 コロナ禍の中で東京五輪は開催され、8月8日(日)、17日間の日程を終えて閉会式を迎えた。

 ワクチン接種もまだ道半ばで、第5波襲来のうねりが押し寄せようとする中、「開催反対」の声も根強かった。

 無観客開催となったが、205の国・地域から約1万1000人の選手が参加し、技を競い合う姿に感動も広がった。

 日本経済団体連合会会長の十倉雅和氏は今回の東京五輪をどう受け止めたのか?

「まず、最初に言わなければいけないのは、開催までこぎ着けた関係者の方々に敬意を払いたいと思います。本当に1年延期をというだけでも大変なのに、コロナ禍が続いて、安全安心を第一にいろいろ苦労をされて開催にこぎ着けた。開催自体に賛否あったことは承知していますけど、国際公約である開催にこぎ着けた関係者の方々に、敬意を改めて表します」と十倉氏は関係者の労をねぎらう。

 第1回オリンピックは発祥の地・ギリシアのアテネで開催。以来、4年ごとに開かれてきたが、この間、戦争で中止となったり、紛争が原因でボイコットする国が出たりするケースも何回かあった。

 1980年のモスクワ大会では旧ソ連のアフガニスタン侵攻に反発した米国、日本、西ドイツ(当時、現ドイツ)の自由主義陣営の西側諸国がボイコット。その次のロサンゼルス大会(84年)は旧ソ連と社会主義国の東側陣営が大会をボイコットし、政治的対立が『平和の祭典』の五輪に持ち込まれたという苦い経験がある。

 今回は新型コロナ感染症のパンデミック(世界的大流行)の真っ只中、危機管理を行いながらの大会開催。賛否両論が激しくぶつかる中での開催であった。

「いろいろなドラマを生みましたね。人間の努力する姿は尊いとか、努力したものが結実する。また紙一重で結実しなくて報われない時に流す涙、それも素晴らしいんですが、すべての人間の尊厳に関わることですね。そうした個々の具体例がわれわれの胸を打ちます」と十倉氏は大会開催の意義はあったという感想を述べる。

 8月24日(火)からは、『東京2020パラリンピック』が9月5日までの日程で開催される。

 人類が困難や危機に遭遇したときに、共に手を携えて立ち向かい、1つの解をたぐり寄せることの大切さを今回のオリンピック・パラリンピックは示してくれている。

本誌主幹 村田博文

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