2021-08-31

なぜ今、江戸川区小岩なのか? 三井不動産の「小岩駅北口」再開発が注目される理由

「JR小岩駅北口地区第一種市街地再開発」の完成予想CG



 実は今、小岩は北口の他、南口で2地区と計3カ所で再開発が進む、東京都内でも極めて珍しい場所になっている。北口の地権者の中には、北口の潜在力を引き出して、南口にひけを取らない駅前開発にして欲しいという思いを持つ人も多かった。

 三井不動産など不動産デベロッパーにとって、この小岩周辺などJR総武線沿線の城東地区はこれまで「手がつけられていない場所」(野田氏)だった。

 それが、都内の他の地域の再開発に一服感が出る中で改めてフラットな目で見直すと、小岩を始め総武線沿線は利便性が非常に高いことが改めて認識されるようになってきた。例えば小岩駅は東京駅まで約20分、品川駅まで約30分、新宿駅まで約40分の場所に位置する。亀戸や平井、船堀でも再開発が動く。

 お隣の新小岩でも駅近くで住友不動産や野村不動産がマンション開発を手掛けるなど「再開発に限らず、今後さらに良質な住宅の供給は増えていくのではないか」(野田氏)。

 近年、共働きの家庭が増える中で、多くの人が勤務先としている都心への距離は、住宅選びにおいて重要視され続けている。コロナ禍にあって、さらに「都心回帰」、「利便性回帰」の動きが強まる。

 ただ、小岩周辺の住宅価格は過去5年で約4割上昇している。足元では坪単価350万円ほどの市場になりつつあり、例えば70平方メートルのマンションを買えば、約7400万円になる計算。「5年前とは全く違うマーケットになっている」(同)

 コロナ禍の中で、今後東京のマンション市況はどうなっていくのか。不動産経済研究所企画調査部主任研究員の松田忠司氏は「都心マンションは高値でも売れており、足元で価格が下がる要因はない」と指摘する。

 近年、建築技能労働者の不足や資材費の高騰に加え、土地の価格が上昇しており、マンション開発のコストは高止まりしている。さらに用地取得が難しくなっており、デベロッパーとしても、どんどんマンションを売っていくという地合いにはない。“弾数”が限られるということになれば、やはり価格は上がる。

 さらに低金利が長期化し、過去の経済危機と比較して金融機関が傷んでいないこともマンション市況の高止まりにつながっている。

 小岩など総武線沿線に関しては「今、大手が駅前再開発を手掛けているが、これまでそうした物件の供給がなかったエリア。利便性が高い割には城南、城西に比べて価格が抑えられていることに魅力を感じる層が集まってくるのではないか」(松田氏)。

 小岩周辺は、「億ション」が増加した東京都心に比べて、まだサラリーマン家庭にとってギリギリ手が届く範囲で供給が可能な地域となっており、ある意味で「最後のフロンティア」と言えるかもしれない。

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