2021-08-27

帝国ホテル社長が語る”コロナ禍での一大投資”

さだやす・ひでや
1961年東京都生まれ。84年学習院大学経済学部卒業後、帝国ホテル入社。入社以来、ほぼ一貫して営業畑を歩み、2004年営業部長、08年帝国ホテル東京副総支配人兼ホテル事業統括部長、09年取締役常務執行役員兼帝国ホテル東京総支配人、12年専務などを経て、13年より現職。

「いかに“ザ・ホテル”をつくっていくか」──。帝国ホテル社長の定保英弥氏はこう意気込みを語る。同社は最大2500億円を投じて旗艦店「帝国ホテル東京」を建て替え、110億円をかけて京都・祇園の「弥や 栄さか会館」を活用した新ホテルを建設する。コロナ禍で訪日外国人観光客が途絶え、国内の宿泊需要も回復していない中、ポスト・コロナ禍をにらみながらも、創業者・渋沢栄一の教えを基に熾烈化するホテル戦争にどう臨んでいくか。

コロナ禍という苦境下での発見

 ─ コロナ危機でホテル業界は厳しい状況が続いています。

 定保 昨年度の業績は大変残念な結果に終わりました。コロナの感染拡大が世界的な規模になり、長期化していることで先を見通せず、辛いところです。今年度に入っても緊急事態宣言と解除の繰り返しが続いており、通常の商売ができるような環境には全く戻っていません。

 4月から6月にかけての東京都内の主要ホテルの平均稼働率も2割に届いていませんし、当社も同様です。また、宴会部門も法人需要の冷え込みから、大きな打撃を被っています。そのため、現在の出社比率もいまだに約6割です。

 ─ 従業員との対話をどう進めましたか。

 定保 実は昨年5月、当時は約8割の従業員が自宅待機をしておりましたが、約2500人の全従業員に私からのメッセージを一斉配信したのです。「雇用は何としても守っていくつもりだ。感染防止の対応策を含め、コロナ禍を生き抜くために、どんな販売促進を図っていくか、経費をどう削減していくか。何でもいいからアイデア・提案を募りたい」という内容でした。

 すると、5473件のアイデア・提案が返ってきたのです。感染防止の対応策として実行しているサーモグラフィーの設置なども、そのアイデアの中の一つです。他にもレストランのバイキング料理を客席のタブレットで注文する方法なども採用しました。会社は大丈夫だろうかという不安があった中での提案だったと思います。改めて仲間を誇りに思いましたし、心強く感じましたね。

 ─ その中にサービスアパートメントの提案もあったと。

 定保 ええ。アイデア・提案の中からヒントをもらって始めたのがサービスアパートメントです。もともと構想はあったのですが、今回のコロナの感染拡大で外国人のお客様がしばらく戻ってこない状況となり、また、国内のビジネス、レジャーともに冷え込んだことで、931室もある部屋数のほとんどが稼働できなくなる状況になりました。

 この固定資産をどう活用していくかが頭の痛いところでもあったのですが、従業員からのアイデア・提案を基に有効活用しようということになりました。実際に2月に99室の受付を開始すると、即座に完売。新たに追加し、倍の約200室に増やして第二期販売を開始しました。

こちらも好評で6割から7割程度の稼働になっています。

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