2021-08-26

【政界】解散の大義名分、経済再生も見えず、菅の足元も不穏に

イラスト・山田紳



接種証明書は進まず

 感染収束の兆しがない中、コロナと共存する「ウィズコロナ」を目指す動きはある。たとえば、ワクチンの接種証明書、いわゆるワクチンパスポートの導入だ。

 ワクチンの2回接種が完了したことを示す証明書を客が提示すれば、飲食店での酒類提供やイベントの有観客開催などを可能とする仕組みで、消費拡大へのインセンティブにもなるとの考えだ。

 経団連は6月、「社会経済活動を早期に回復に導く際に有効なのが、個人のワクチン接種記録を簡便かつ真正性を担保できるデジタル形式で示すワクチンパスポート」として導入を求める提言を行った。ワクチンパスポートをスマホのアプリに搭載し、それを提示して飲食店やイベントなどでさまざまなサービスを受けられる仕組みにすることを提案している。

 フランスやイタリアでは、8月から飲食店や文化施設で接種証明書の提示が義務化された。米国でもニューヨーク市は9月から店内飲食の際は提示を完全に義務化すると発表した。

 しかし、日本政府の腰は重い。海外渡航を目的としたワクチンパスポートは7月26日から申請の受け付けを始めたが、国内での発行には二の足を踏む。「ワクチンは自らの判断で接種するもので、接種の強制や不当な差別的取り扱いにつながることは適切でない」(官房長官の加藤勝信)というのがその理由だ。

 身体的理由でワクチンが接種できない人もいる。信念で拒否する人も一定数、存在する。接種が法律で義務付けられているわけではない。欧米でもワクチンパスポート義務化反対のデモが起きている。

 ただ、日本の場合は別な理由もありそうだ。そもそも政府がワクチンを十分確保していると強調する一方、現実問題として接種を希望してもなかなか受けることができない人たちがいる。

 需要と供給のミスマッチのほか、理由として事務作業を行う市区町村の人員不足も挙げられる。ワクチン接種は全国で1日100万回を超えるペースだが、接種日や接種回数といった個人の接種状況を記録・管理するワクチン接種記録システム(VRS)への入力が各市区町村や医療機関で滞っている。VRSへの入力は煩雑で、人手不足の状態にあるからだ。

 すでに導入された海外渡航用のワクチンパスポートの発行は市区町村が行う。現時点で発行対象の国は一桁にとどまり、需要は多くない。しかし国内向けとなると、最大1億人分近くとなる見込みで、疲弊している市区町村の負担が格段に増えることになる。

 事務作業のデジタル化が進んでいれば、こうした問題も改善されたはずだが、コロナ禍で露呈した日本の行政のデジタル化の遅れは、ここでも浮き彫りになっている。

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