2021-08-26

【政界】解散の大義名分、経済再生も見えず、菅の足元も不穏に

イラスト・山田紳

肝心の新型コロナウイルス対応も船頭多くして右往左往──。ワクチンの接種を加速させて経済の早期回復をもくろむ菅義偉政権だが、感染の収束は依然、見通しが立っていない。自公の不協和音も目立ち、野党の支持率も低迷。菅首相の不手際や政府与党内の連係ミスも目立ち、政治的混乱が経済再生の壁となる気配さえ漂っている。自民党に代わる政権与党の不在が国民に無力感も与えている。

「経済」話題にならず

 東京五輪開催中だった5日、東京都の新規感染者は初めて5000人を突破し、全国規模でも1万5000人を超え、コロナの感染拡大はとどまるところを知らない。

 8月末は来年度予算の概算要求が締め切られる時期で、本来ならばどのような政策にどの程度予算を投入するかが話題になる。だが、五輪以外の一般のニュースはコロナの感染拡大ばかりで、コロナで疲弊した経済をどう立て直すか、という話題はほとんど聞こえてこない。

 そんな中、政府高官は2021年度補正予算案を編成し、「30兆円規模の追加経済対策を考えている」と明かす。衆院議員の任期満了(10月21日)を見据え、衆院選の前に打ち出し、選挙の目玉とする算段だ。与党が勝利すれば衆院選後の臨時国会か、遅くとも来年1月召集の通常国会冒頭で成立させる構えだ。

 これまでも大規模な経済対策は行ってきた。休業・営業時間短縮の要請に応じた飲食店への補償、企業の資金繰りを支援する実質無担保・無利子の融資、雇用者への賃金担保など経済支援のメニューは多い。102兆円規模だった20年度一般会計予算は、3度の補正予算編成の結果、175兆円に膨らみ、21年度予算も当初予算としては過去最高の106兆円に上る。

 予算増大の原因はコロナ対策のためで、「疲弊した企業や飲食店の一定の下支えになっている」(自民党幹部)と言える。一方で20年度予算は過去最大の30兆円の繰り越しとなった。例年は5兆円程度で、膨大な予算を使い切れていないことになる。

 繰り越しの内訳をみると、最も多いのは実質無利子・無担保融資の経費で、これだけで6兆4000億円に上った。飲食店への支援経費も3兆円を超えた。予算は豊富に用意したが、執行するための事務作業が追いついていない様子がうかがえる。

 酒類提供を禁止された飲食店の中には、「店がつぶれる」として営業を行うケースが少なくない。休業・時短、酒類提供の禁止は新型コロナ特別措置法に基づく要請であり、従わなければ違法となる。だが、繁華街は半ば「無法状態」の様相で、資金が飲食店になかなか行き届かないミスマッチが要因の一つとなっている。

 一方、財務省は7月、20年度の税収が前年度比4・1%増の60兆8200億円で、過去最高になったと発表した。19年10月の消費税率10%への引き上げによる増収に加え、コロナ禍の「巣ごもり需要」が底支えしたとみられる。街角の実態と乖離しているかのようにも見えるが、コロナ禍の打撃が飲食や観光、旅客輸送業などに集中し、明暗がくっきり分かれる二極化が進んでいる形だ。

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