2021-08-16

【キッコーマン】中野祥三郎新社長が語る「調味料は一度その地に定着すれば簡単にはなくならない」

なかの・しょうざぶろう
1957年千葉県出身。81年慶應義塾大学大学院経営管理研究科修了後、キッコーマン入社。 国内営業、海外販社出向、2008年4月経営企画部長、6月執行役員、11年常務執行役員、12年CFO(最高財務責任者)、15年取締役常務執行役員、19年キッコーマン食品社長などを経て、21年6月22日より現職。

コロナ禍でも製造は止めない

 ─ コロナ禍の約1年半、
消費環境がどのように変化したと分析していますか。

 中野 昨年2月の下旬に学校が休校となった頃から家庭用の需要がすごく高まりました。簡便で手軽に食べられる麺類やお米が売れましたが、当社の商品でも簡単に調理できる総菜の素「うちのごはん」シリーズなどは需要が伸びましたね。

 1回目の緊急事態宣言が明けた後、今回のコロナが長引く可能性が高いと受け止められ、在宅勤務が増えました。それに伴い、自宅で料理するケースが増え、当社の料理レシピを掲載するサイト「ホームクッキング」へのアクセスも急増しました。

 一方で、居酒屋やレストランなど業務用の需要が減りました。その影響は大きかったですね。しょうゆの中身は業務用と家庭用で同じものもありますが、容器は全く違ってきます。

 業務用で使っている容器は缶など大きいものが多く、製造のラインが違ったり、場合によっては工場が違ったりするのです。ですから、製造ラインへの応援をどうするかなど、想定外のことが続く中で、製造を続けたというのが実情です。

 ─ 今は落ち着いたと。

 中野 ええ。体制を立て直し、去年の後半ぐらいからは安定した事業活動になっています。当社が扱うしょうゆなどの調味料は生活必需品ですから製造を止めるわけにはいきません。ですから、工場内でも休憩時間や食事の時間をずらしたり、マスク着用や消毒など安全への配慮を徹底し、事業の運営に影響が出ないように細心の注意を払いました。

 ─ そういった緊張感のある環境下での社長就任です。

 中野 はい。やはり新しい価値を創造していく。それが当社の役割です。では、新しい価値とは何か。それは日々の食生活の中で楽しみながら料理を作っていただいて、それをおいしく召し上がっていただくこと。当社は、「キッコーマンの約束」として「こころをこめたおいしさで、地球を食のよろこびで満たします。」を掲げています。

 これを実現するためには、従業員がそれに積極的に取り組み、サプライチェーンから流通まで、我々の事業に関わっていただいている方々に幸せになっていただく必要があります。そして結果的に当社の業績が上がれば、投資家の皆さんにも還元できますし、社会に対する貢献もでき、お客様の喜びにつながるのです。そのためには社員が輝く職場が必要です。

 ─ 新商品の提案についての考えを聞かせてください。

 中野 一つは「減塩」です。コロナを経て健康に対する意識は相当高まっています。当社は昨年「いつでも新鮮 超減塩しょうゆ 食塩分66%カット」という商品を出しました。塩分を気にする高齢者がこの商品のメインターゲットですが、若い方でも塩分を控えたいという方がいらっしゃいますので、ぜひ若い方にも使っていただきたいと思っています。

 それからもう一つが「簡便」です。在宅勤務の普及で、自宅で料理することが増えたと思うのですが、一方で料理をすることに対する負担感もあります。そうすると、ある程度、簡便な調味料が求められてきます。

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