事業で社会的課題を解決する
── コロナ危機でビール業界は大きな影響を受けました。
勝木 ええ、私は「未来が早く来た」と思っています。消費の多様化や社会の変化はコロナがなかったら10年先だと思われていましたが、それがいま訪れている。1981年以降に生まれたミレニアル世代や90年代中盤以降に生まれたZ世代の方々は、エシカル消費や環境への影響に対する関心が高い。
以前からこのことは判っていたことでしたが、それが社会全体に広がってきていると我々は強く意識しなければいけません。したがって、私もサステナビリティを経営にしっかり組み込んで、経営戦略そのものとして進めていこうよと社内に呼びかけています。これは海外も同じです。我々は事業を営む中で、社会課題を解決していかなければいけません。
── 事業そのものを社会課題の解決につなげるのですね。
勝木 我々の収益の源泉が社会的課題の解決になるところまで進めていかないと、生き残っていけないと思います。
── 事例はありますか。
勝木 はい。昨年、アサヒビールで「スマートドリンキング」宣言を行いました。酒類に含まれる純アルコールグラム量のホームページでの開示を今年3月から開始し、商品への表記も8月から順次行います。加えて、2025年までにアルコール度数3・5%以下の低アルコールやノンアルコールの商品を全体の20%に高めていきます。
3月末にアルコール度数0・5%のビールテイスト飲料「アサヒ ビアリー」を、首都圏を中心とした1都9県で先行発売し、6月末からは全国発売を始めました。先行発売で非常に手応えが良く、足元でも全国から受注が好調に集まってきている状況です。これを手始めに、いろいろな商品を出していきます。
お酒を飲める人、飲まない人、飲めるけど飲まない人と様々な人たちがいます。また、翌日の仕事を考えて控えるときもある。そうした様々な方々や状況における飲み方の選択肢を広げ、多様性を享受できる社会の実現を目指すのがスマートドリンキング宣言です。これには多くの共感を得ているところです。
低アルコールの新商品「アサヒビアリー香るクラフト」「アサヒハイボリー」などが登場予定だ ── 人々にとって酒類の価値はどんなものだと考えますか。
勝木 やはり人に潤い、楽しさ、喜びをもたらしてくれるものだと思います。コロナ禍で人と人のつながりがより一層重要になってきました。そのつながりをつくるために、ハードルやバリアーを下げるという酒類の効能は今後も決して失われることはないと思っています。
── 業務用に強い「スーパードライ」が飲食店の営業自粛で影響を受けていますね。
勝木 そうですね。昨年の業務用の売り上げは金額ベースで4割減になりました。当社のビール類のうち業務用構成比は19年に31%あり、昨年は21%でした。昨年、4割減少した売り上げを今年は1割戻す計画でしたが、足元の状況をみると、少し遅れているような状況です。
グループ全体の業績としては、22年には19年レベルに戻すと言っています。ただ、国内酒類事業が19年のレベルにまで戻るには、さらに1年程度はかかるのではないかなと。業務用は19年の姿にそのまま戻ることはないと想定していないといけません。アクリル板の設置や消毒も当面は残るでしょう。外食の機会を消費者の方々にとって特別な機会にしていかねばなりません。
≪子宮頸がん≫の現状と今後の対策 青木大輔・慶應義塾大学医学部教授