2021-07-18

【政界】第5波阻止に全力 総裁再選を目指す菅首相に「胸突き八丁」の夏

イラスト・山田紳



二兎を追う枝野

 支持率で自民党に水をあけられている野党は、次期衆院選に向けて協力態勢の構築を急ぐ。ところが、野党第1党の立憲民主党の腰が定まらず、旧態依然とした駆け引きが目立つ。

 代表の枝野幸男は6月17日、都内で開かれた連合中央執行委員会に国民民主党代表の玉木雄一郎とともに出席。「共産党とは理念に違っている部分があるので連立政権は考えていない。共有する政策でのパーシャル(部分的)な連携や、候補者の一本化に努力したい」と表明した。

 連合はかねてから立憲民主党が共産党に接近することを快く思っていない。最近も、両党の国会議員による対談を収録した書籍に連合が難色を示し、出版目前に「お蔵入り」するという珍事があったばかりだ。枝野の発言には連合への配慮がありありで、連合会長の神津里季生も終了後、「積極的に受け止めたい」と評価した。

 そうなると、「野党連合政権」構想を掲げ、選挙のたびに各地で独自候補を取り下げてきた共産党はおもしろくない。委員長の志位和夫は「枝野さんには枝野さんのお考えがあるのだろう。よく話し合っていきたい」と平静を装ったが、党の方針に従って他党の候補者を応援してきた支持者には不満がたまる。

 ある党幹部は「今の連合にどれほど集票力があるのか」と怒りを代弁した。立憲民主党内からも「代表の考えが理解できない。都議選で共産党の応援に期待する候補者もいるというのに」と疑問の声が上がった。

 連合との会合の2日前、枝野はもう一つの顔を見せた。衆院本会議で菅内閣に対する不信任決議案の趣旨弁明に立つと、政権獲得後の新型コロナ対策として消費税率を5%に引き下げる時限的な減税を提唱したのだ。

 発売したばかりの『枝野ビジョン 支え合う日本』(文春新書)では、枝野は時限的な消費税減税に慎重な考えを示していた。突然の変節には、衆院選をにらんで共産党やれいわ新選組に秋波を送る狙いがあったとみられる。

 枝野は昨年9月の党代表選でも唐突に「時限的な消費税率0%」を打ち出した経緯がある。当時、自民党では菅新総裁が誕生し、すぐに衆院解散に踏み切るのではないかという観測が広がっていた。つまり、枝野の消費税減税論は選挙対策の色合いが濃い。しかも、今回は後で「選挙公約ではない」と言い繕い、党内で物議を醸した。有権者には何ともわかりにくい。

 八方美人のような枝野に、公明党幹部は「共産票も連合票もどちらももらおうなんて虫がよすぎる」とあきれる。17年衆院選で立憲民主党を結成し、ブームを巻き起こしてから4年、枝野は次の戦略を描き切れていない。

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