経常利益10%超があってこそ様々な危機を乗り越えられる
―― この1年、全世界がコロナ禍で大変な状況になっているんですが、コロナ禍の感想から聞かせてもらえませんか。
津坂 新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、世界的に既存のマーケットの需要が大きく減退する一方で、企業の社会的責任に対する注目度がさらに高まっているように感じます。
日本でも、政府が2050年の温室効果ガス排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラルを打ち出しましたが、各国で国を挙げたESG(環境・社会・企業統治)への取り組みが進んでいます。しかも、ESGを重視した経営を行う企業は、今回の新型コロナのような予期せぬリスクへの耐性が高いことが指摘されています。
われわれ日本産業推進機構(NSSK)も、2014年の設立以来、ESGに力を入れてきました。7年前はサステナビリティとか持続性とか言っても、皆さん「何それ?」という感じでしたが、信念をもって継続してきて良かったと思います。
―― 最近では国連が定めるSDGs(持続可能な開発目標)やESGという言葉が毎日飛び交うような時代になりました。
津坂 そうなんです。実は6月に当社で初めてESGのアニュアルレポートを発行します。その骨子は、当社の投資活動の中で一番誇りに思うのが多様性であり、人材や組織の多様性はより優れた投資結果につながるということなんです。
例えば、われわれは女性社員や幹部の比率をどんどん増やしていまして、投資先企業の社長、あるいはナンバー2はすでに40%が女性もしくはマイノリティです。従業員全体の実に78%が女性で、しかも、女性が管理職の49%を占めています。こうした数字は海外のトップファンドと比較しても負けていません。
―― 投資先企業の約8割が女性というのは、若い会社が多いということですか。
津坂 若い会社もありますし、80年の歴史のある会社もあります。そうした様々な会社で投資の効果が出ていますので、わたしどもが当初から目指していた多様性を尊重する経営ということが、より良い業績と投資結果につながり、社会貢献につながっていると実感します。ですから、今はうまく循環しているなと思います。
今回のコロナもそうですし、リーマンショックの時もそうでしたが、厳しいトンネルをいち早く抜け出した企業というのは、やはり、優れたビジネスモデルを持っている企業だと思います。京セラ名誉会長の稲盛和夫さんがよく仰っていたのが、経常利益10%あってこそ様々な危機を乗り越えられると。
常に10%の利益を出せる企業であれば、景気が悪化しても5%くらいは確保できることになりますが、初めから数%しかない企業では景気が悪化すればゼロになってしまいます。それで赤字になり、銀行に迷惑をかけ、従業員にもお客様にも迷惑をかけてしまう。ですから、こういう状況にならないようにするためには、初めから筋肉質な企業でなければならないんです。
―― そういうビジネスモデルに日頃からしておかなければならないと。
津坂 ええ。ですから、平時からコストをなるべく抑えて、売上を最適化していくことが大事なのだろうと思います。