2021-06-21

【コロナ問題から環境・成長戦略まで】経済同友会・ 櫻田謙悟の新資本主義論 「世界最先端モデルを示せるのは日本の企業人」

櫻田謙悟・経済同友会代表幹事



『中庸』の考え方で 新しい資本主義を!

「最近、ガバナンスで大事だと思っていることがあります。企業は誰のものかという議論の中で、新しい資本主義があって、ダボス会議ではシュワブ会長がグレートリセットと言っていますが、新しい資本主義というのは正しい観点だと思っていて、利益さえ出せばいいということから早く変えなければいけないと」

 株主第一主義が所得格差や社会的分断を生む土壌になったとして、最近は顧客、従業員、株主、地域社会など全てのステークホルダーに気配りするステークホルダー資本主義を実践しようといった議論が関心を呼ぶ。

 いわば意識の転換である。櫻田氏は例えば、「社員に支払う給料も、これは価値を生んでいるわけで、それをコストと捉えるのが今の資本主義です。ESGにしても、そこをコストと捉えるのが今の会計制度です」と現在の資本主義体制下での見方、考え方の違いを強調する。

「会社は誰のものか」、「会社は何のためにあるのか」という議論が盛んになり、格差・分断の現象も加わって、自らの企業は社会にとって有益な存在かどうかが再考される時代。

「純利益に加えて、それを生むためにかけたコストのうち、社会にプラスのものがあるとすれば、それを割り戻したものも加える。それがその企業の価値なんだと。これこそが新しい資本主義の考え方だと言っているんです」

 人を大事にし、環境つまり自然をも大事にする考え方。

「ええ、環境がまさにそうですよね。ちょっと値段は高いけれども、再生可能エネルギーを買うのもそうかもしれない。そういう価値論が全部加味された形で会計制度が作り直され、その企業の価値が正しく算定されると。そう考えていけば、少なくともテスラの企業価値、時価総額がトヨタ自動車の倍になるということもなくなると思います」

 櫻田氏はこう新しい資本主義像の一端を説明し、「その最先端を行くのが日本の企業群だと思っているのです」と強調。

「まさに、日本の〝三方よし〟の考え方だと思います。そういう意味では世界が新しい資本主義を模索しているのであれば、その最先端のロールモデルを示せるのは、日本の企業群だと思っていますし、日本の国民だと思っているんです」

 櫻田氏は例年出席するダボス会議(スイス)で、日本に本来ある『中庸』の考え方を話したことがある。両極端に片寄ることなく、そして過不足なく調和が取れているという言葉。

 もともとは孔子の説く儒教から生まれた言葉で、アリストテレスの哲学・倫理学でも徳の中心になる概念だという。

「西洋でも、ゴールデンミーン(Golden Mean)と言っているし、この中庸の話は通じますね」
 根本概念は東西でも通じあうということを踏まえ、櫻田氏は「新しい資本主義を経済人が考えるのはもちろん大事ですが、もっと広いステークホルダーと共に考えていくことがもっと大事」と訴える。

 コロナ禍で山ほど課題は噴き出したが、同時に、潜在力を掘り起こすことで解決策は見出せるという櫻田氏である。

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本誌主幹・村田博文

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