2021-06-21

【コロナ問題から環境・成長戦略まで】経済同友会・ 櫻田謙悟の新資本主義論 「世界最先端モデルを示せるのは日本の企業人」

櫻田謙悟・経済同友会代表幹事



プラン作りはあっても肝腎の執行力が…

 日本でも、民間(経済人)がPCR検査会社を立ち上げたりする動きが登場した。しかし、
こうした民間の自発的行為と保健所や公的病院の連携が当初うまく取れずに来ている。

 感染症対策の中心となる保健所や公的病院はもちろん、民間病院でも医療従事者は今回のコロナ禍では全力で自らの仕事に没頭。その使命感に裏打ちされた姿には国民も感謝する日々。関係者は懸命に働いている。

 それだけに、医療資源が限られている中で、公的病院と民間病院の連携は不可欠だが、その連携不足は否めないのが事実。

「これはワクチン問題だけでなく、実は日本は、プランニングはするけど、執行力が弱いということ。考え直さないといけないと思います」

65歳以上の高齢者を優先して接種を始めたものの、各地で予約受付の電話がパンクして不通になるなどした。インターネットに不慣れな高齢者が子供や孫に手伝ってもらって、スマホやパソコンでようやく予約がとれるといった具合で、一時執行の現場がガタガタになった。

「本来、日本は現場力が強いといわれてきている国。現場の知恵を生かすような仕組みづくりになっていない。現場に人が足りていないし、現場に裁量権を与えていない」と櫻田氏は非常時の執行力・現場力を発揮するための体制づくりが早急に必要と訴える。

 例えば、免許を持っているが、結婚や子育てで引退している女性の看護師は全国に約70万人いるといわれる。こうした引退の看護師たちは〝130万円の壁〟に直面していた。年間130万円を超える収入があると、夫の扶養から離れて社会保険料が上がることもあって、病院や診療所への復帰を控える人もいる。

「それを今回に関しては、130万円の壁をなくしますからというようなことをやっているわけで世界から見たら茶番です」

 ワクチン接種に話を戻せば、米国では獣医や薬剤師も訓練してやっている。糖尿病患者は、日本でも自分で腹部に注射する例もある。それを全部マネてやれというものではなく、非常時に国民がどう危機対応に参加していけるかを練り直そうということである。

そもそも、なぜ日本は有事の統治が弱いのか?

 コロナ禍ではっきりしたのは、課題があるという認識、これは持っているのに、解決策づくり、そしてそれを実行・執行するところへなかなか向かわない。

 つまり、冒頭、櫻田氏が指摘したように、課題の先送り体質があるということ。
 なぜ、そうなのか?
 日本は医療行政にしても、また安全保障、エネルギーなど国の施策の根幹で、課題解決を先送りし、その結果、議論がタブー視されてきているという流れ。

 1つの課題をめぐって、賛成、反対の声が真っ二つに分かれたりすると、政策担当者が〝当座をしのぐ策〟で切り抜けようとする。

 そうした当座しのぎでやってきたことのツケがコロナ禍で一気に噴き出したのではないか。

 そして、政策に当たる担当者が失敗したときの責任追及を恐れて〝リスク回避〟という道に逃げていやしないかということ。これは非常時体制をつくりあげる上で大変重要な問題を孕む。

「常にリスク回避、リスクがないほうに動いていくというのが、この国が陥ってしまった病。こういうところに成長戦略は生まれて来ないと思います。とにかく失敗しないようにですから」

 この日本の統治不全、リスク回避体質をどう直していくか?
 櫻田氏は例えば喉元過ぎれば、で忘れてはいけないことはたくさんあるとして、「コロナ危機というのは何だったのか、それは日本にとって何だったのかということをしっかり書き留めておく。これを奇貨として、対応策を築いていくときです」と語る。

〈オススメ記事〉塩野義製薬が新型コロナ「国産ワクチン開発」で年内納品を目指す

本誌主幹・村田博文

Pick up注目の記事

Related関連記事

Ranking人気記事