2021-06-11

2050年のカーボンニュートラル実現なるか? 次世代エネルギーの確保に向け、問われる日本の覚悟

環境対策とエネルギー確保の両立をどう図っていくか

環境対応と雇用維持の両立へ トヨタが「水素エンジン」



 カーボンニュートラルの実現と雇用維持の両立へ――。

 トヨタ自動車が水素で新たな一手を打ち出している。

 5月下旬に開催されたスーパー耐久富士24時間レース。そこで登場したのが「水素エンジン」だ。同社は水素エンジンが「一つのソリューション(課題解決)になるのではないか」(執行役員の前田昌彦氏)と見る。

 既に市販化している燃料電池車(FCV)は車内で水素と空気中の酸素を化学反応させて電気を起こし、モーターを駆動させる。それに対し、水素エンジン車は既存のガソリンエンジンに一部変更を加え、水素を燃焼させることで動力を得る。燃料はガソリンと混合しない100%純水素。化石燃料を燃やさないので、走行時にCO2(二酸化炭素)はほぼ発生しない。

 さらに、電動化で最も深刻な影響をもたらす雇用にもメリットが生まれる。自動車関連業界の雇用は550万人だが、3万点の部品を必要とするガソリン車が電気自動車(EV)に置き代わると、「エンジンだけでも1万点と言われる部品」(トヨタ関係者)が不要となり、部品会社への影響も深刻化する。

 しかし、水素エンジンを実用化できれば、エンジンに関わる雇用も一定程度維持できると見込まれ、年間300万台規模の国内生産を堅持するトヨタにとっては、「これまで磨き上げてきたエンジンに関する技術力を生かしながら環境規制にも対応できる」(同)ことになる。

 肝腎の完成度については、冒頭のレースで「ヤリス」のエンジンと水素タンクを積んだレース車両の「カローラスポーツ」が24時間で358周(1634㌔)を走って完走した。ただ、「耐久性や品質保証など実用化の目途に向けて研究開発を続けている状況」(同)だ。

 水素エンジンもFCVの課題と同様、車両価格をはじめ、「充填拠点など、水素をつくる・運ぶといったインフラ部分の整備もこれから」(同)。2040年までにホンダがガソリン車の販売を打ち切ることを決める中、トヨタはエンジンの可能性を深掘りしていく考えだ。

世界各国では内燃機関の販売を禁止し始めている。その流れに水素エンジンがどう絡むか。EV化の出遅れが指摘されるトヨタが世界の電動化の流れをつくれるかどうかにかかってくる。

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