2021-06-08

【4月の餃子販売数は過去最高】王将フードサービス・渡邊直人の「外食」進化論

渡邊直人・王将フードサービス社長



今後の外食は量より質!



 1967年に京都で創業した餃子の王将。各店舗の店長が独自メニューの開発や営業時間などを考える“個店経営”をウリに、全国733店舗(21年5月末現在)を運営する日本最大の中華料理チェーンだ。

 渡邊氏が社長に就任したのが2013年12月。そこから渡邊流の王将改革が始まった。

 まず着手したのが、従業員のやる気を引き出すための労働環境と待遇の改善。14年には労働組合が要求した金額の4倍にあたる1万円のベースアップを実現した。

 次が食材改革。14年10月から“安心・安全”を追求するとして、餃子の主要食材と麵に使用する小麦粉をすべて国産に切り換えた。中でも、にんにくは青森県産、小麦粉は北海道産と産地までこだわっている。

 3点目がセントラルキッチンを建設しての生産性改革。16年に埼玉にセントラルキッチンを、昨年は京都に新たな餃子の製造ラインを増設。それまで各店舗での手包みにこだわってきた餃子を機械化したことで、品質と生産性が向上したという。

「創業以来、手包みの餃子をずっとウリにしてきたので、ひょっとすると創業者(加藤朝雄氏)からお叱りを受けるかもしれません。でも、セントラルキッチンでの機械化を進めることで、品質が向上し、店舗での作業時間も減り、その分の力を人材育成に充てることができた。国産食材に切り換えたことで質のいい商品であれば相応の価格でお客様に受け入れてもらえるということが分かった」(渡邊氏)

 すでに同社は人材育成の強化に向け、京都の本社に『王将調理道場』を開設。店長経験者を講師にし、食材の仕込みから、炒める、揚げるなど調理の基本や包丁の研ぎ方などの技術を社員が改めて勉強している他、『王将大学』という店舗マネジメントを学ぶための仕組みづくりも行っている。

 コロナはいずれ収束するだろうが、問題は今後の外食産業がどう生き残り、成長していくかということ。日本の外食市場は1997年の29兆円をピークに縮小し、19年には26兆円まで縮小。弁当や総菜など、調理済みの食品を持ち帰って食べる“中食”(なかしょく)や自宅で調理する“内食(うちしょく)”需要が高まり、少子高齢化で縮む国民の胃袋をどう掴むかが問われるようになった。

 そうした中、「プロが作った料理をプロの接客・サービスで提供するのが外食の原点。お客様の“せっかく来たのだから美味しいものを食べよう”という気持ちは変わらない。今後の外食は量より質。未来への進化と原点回帰という、相反するものをどうやって両立させるかが、これからの外食産業に問われてくる」と語る渡邊氏。

 進化と原点回帰のバランスをいかに取っていくのか。渡邊氏の挑戦はこれからも続く。

Pick up注目の記事

Related関連記事

Ranking人気記事