2021-06-08

【4月の餃子販売数は過去最高】王将フードサービス・渡邊直人の「外食」進化論

渡邊直人・王将フードサービス社長

家庭では味わえないものを提供していく!



「(1967年の)創業当時の餃子は、にんにくの風味が強く、臭いが強烈なものだったが、コロナ禍に自宅で食事をする機会が増えたことで、周りを気にせず美味しい餃子を食べたいと考える人も増えた。コロナで鬱屈した気持ちを持っている人も多いと思うが、にんにくパワーで元気になってもらいたい」

 こう語るのは、王将フードサービス社長の渡邊直人氏。

 『餃子の王将』を展開する王将フードサービス。今年3月から発売した新商品『にんにく激増し餃子』の販売が好調だ。これは通常の餃子の2倍以上の青森県産にんにくを使用したもの。ガツンとした旨みが特徴で、餃子全体の販売数量を押し上げているという。

 同社では女性客やにんにくの臭いが気になる方を取り込むために、にんにくを使用しない『にんにくゼロ餃子』を2016年から発売している。また、にんにくを使用しない餃子はパンチが足りないという人もいるため、19年からは生姜の量を2倍にした『にんにくゼロ生姜餃子』を発売。通常の餃子と合わせた餃子全ての売り上げは今年4月に同月比過去最高を記録。実に1カ月で5800万個を売り上げた。

 同社は17年から他社に先駆け、デリバリーサービスのテスト運用を開始。これが図らずも今回のコロナ禍で生きた形。今年4月時点で、デリバリーサービスの実施店舗は昨年4月の138店舗から441店舗に拡大している。

餃子屋さんというと、男性客のイメージが強いが、売り上げに占める男女比はだいたい6・5対3・5。これがデリバリーになると、5・5対4・5になり、かなり女性客の割合も増えてきたという。

「コロナは厳しいが、新しいお客様の開拓にもつながった。餃子の王将は知っているけど、何となく店に入りづらいという女性の方がデリバリーで当社の料理を食べ、今度は店にも来ていただけるようになった。もっとも、店自体に魅力がなければテイクアウトもデリバリーもない。当たりはずれのない安心感も大事だけれど、人は飽きるものだから、進化しないといけない。家庭では絶対に味わえないものを提供していく」(渡邊氏)

 コロナ禍の影響をモロに受ける外食産業。緊急事態宣言下で人々の外出自粛や営業時間の短縮要請に加え、東京などではアルコールの提供自粛など、外食産業にとって厳しい経営を強いられているのが現状だ。

 よく餃子の王将と比較される中華3大チェーンでは、業績の明暗がはっきり分かれている。

首都圏で『熱烈中華食堂日高屋』を展開するハイデイ日高が2021年2月期に28億円の営業赤字、東北や関東で『幸楽苑』を展開する幸楽苑ホールディングスも21年3月期は17億円の営業赤字となった。

 そうした中、王将フードサービスは21年3月期の決算で、売上高806億円(前年同期比5・8%減)、営業利益61億円(同21・1%減)、最終利益43億円(同19・3%減)と黒字を確保。他社が赤字に苦しむ中で健闘している。

 そんな同社が持ちこたえているのは何が理由なのか?

 渡邊氏は「これまで実行してきた改革の成果が出ただけ。コロナ禍でも投資すべきところは投資をし、商品、サービス、接客など、お客様に納得してもらえるかを細かくチェックしている」と語る。

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