2021-06-08

【資生堂のグローバル戦略】 目指すは「スキンビューティーカンパニー」 化粧品ブランド『SHISEIDO』の育成戦略

『SHISEIDO 』初のブランド旗艦店(中央区銀座3丁目)は、テクノロジーとヒューマンタッチを融合させた最先端の店舗

コロナ禍で最もダメージを受けた製品が口紅──。調査会社の消費調査からも、コロナ禍で苦戦する化粧品業界の現状が浮かび上がる。資生堂はコロナ禍の中、改めて原点に立ち返り、「スキンビューティーカンパニー」を目指す方針を発表。矢継ぎ早に構造改革を打ち出す中、会社を代表する『SHISEIDO』ブランドでは、どんな成長を描いているのか──。


資生堂全体の売上の47%が
高付加価値品

 2030年までに「世界ナンバー1のスキンビューティーカンパニー」に──。

 コロナ禍で生活様式が大きく変わる中、化粧品市場も大きなダメージを受けている。インテージの調べによると「2020年最も苦戦したカテゴリー」の1位が口紅。マスクの着用で口紅の利用機会が減り、金額ベースで前年比56 %市場が縮小した。

 こうした中、資生堂は今年2月、中長期経営戦略「WIN 2023and Beyond」を策定。

 スキンビューティー領域をコア事業とする抜本的経営改革を行い、30年までにスキンビューティー領域の世界ナンバー1企業を目指す方針を発表した。

 21年は「変革と次への準備」期間として、事業ポートフォリオの再構築を中心とする構造改革、財務基盤の強化に集中。

 22年は「再び成長軌道」に向かう年として、インバウンドの回復とグローバルブランドの成長拡大、DXの取り組みを加速。

 23年は「完全復活」の年として売上高約1兆円、営業利益率15%の達成を目指す。

 日用品事業のCVCへの譲渡、イタリアの高級ブランド『ドルチェ&ガッバーナ(D&G)』とのライセンス契約解消など矢継ぎ早の構造改革に着手している。

 一方で、デパートや専門店などでビューティーコンサルタント(BC)を通じて販売するプレステージ(高価格帯)領域を強化。プレステージ領域には『SHISEIDO』や『クレ・ド・ポー ボーテ』『イプサ』などのブランドがあるが、資生堂全体の売上高の47%を占め(20年度)、構成比率を年々、高めている。

 その中で、会社を代表するブランドとして世界88の国と地域で展開するのが、企業名をブランド名にした『SHISEIDO』。

 資生堂の海外事業の成長を牽引するプレステージブランドだ。

『SHISEIDO』はこれまでもブランド名に銀座、東京という文字を加えたり、『花椿マーク』をブランドの顔として前面に打ち出すなど、ブランドイメージを形成してきたが、ここ数年、更なるブランド価値向上に注力している。

 チーフブランドオフィサーを務める行定良太氏は「この2年間は、世界でのブランドイメージを統一してきた」と語る。

 というのも、ヨーロッパではメイク、米国では日焼け止め、アジアでは美白など、ブランドイメージが統一しきれていない現状があったからだ。

 そこで、新たに策定したブランドコンセプトが「ALIVE with Beauty」。「スキンケアやメイクによる外面の美しさが内面の美へとつながる体験を提供する」ことをブランドミッションとした。

 そして“肌本来の美しさを引き出す”美容液『SHISEIDOアルティミューン』を看板商品として世界で展開。

 この商品は14年9月、社長の魚谷雅彦氏によるマーケティング改革第1弾として発売された製品で、現在、世界中で6・8秒に1本のペースで売れるブランドを代表する製品だ。

 肌そのものの美しさを求めるニーズは世界共通。アルティミューンを「入口」に保湿ケアや美白ケアなど、他の製品へと販売を拡大させる戦略だ。

『SHISEIDO』は中国でも人気の高いブランドだが、現状ではアジアで支持されるブランドという認識のされ方。グローバルブランドとしての価値向上が課題になる中、「本質的な価値を引き出せるブランドとして、(欧米など)他の地域での取り組みも増やしていく」。

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