2021-06-03

3メガバンクとりそながスマホ送金新会社、効果には疑問の声も

三菱UFJ銀行など3メガバンクとりそな銀行、埼玉りそな銀行の5行が割安な手数料をうたったスマートフォン向け送金サービスの提供を計画している。

 関係筋によると、5行は7月にも少額の送金を手掛ける新会社を共同で設立。キャッシュカードの即時引き落とし機能を使って買い物ができる「Jデビット」の基盤を活用し、スマホ送金のシステムを構築する。その上で2022年度の早期にスマホのアプリを使った新サービスを開始する方針だ。

 利用者が電話番号やメールアドレスなどを使って送金する仕組みで、1回当たりの送金限度額は10万円程度を想定している。ATMによる他行宛ての振り込みでは1度当たり数百円の送金手数料がかかるが、一部の銀行は、住宅ローンや預金など自行との取引状況に応じて手数料を無料にすることも検討中。

 5行で先行して始め、その後にJデビットに参加する地銀や信金など約1300の金融機関に参加を呼びかけ、銀行発のスマホ送金サービスとして幅広く普及させたい考えだ。

 しかし、大手IT企業や通信事業者がスマホで提供するキャッシュレス決済では、すでに利用者同士の送金を無料にするサービスが広がっている。そんな中、今回の試みがどこまで奏功するかは不透明なのが実情。

 金融のデジタル化が進み、銀行は「融資」や「決済」など主力業務をIT企業など異業種に侵食され続けてきた。さらに、厚生労働省の労働政策審議会では、給与のデジタル払い解禁の是非が議論されている。議論の行方次第では、新規顧客開拓の窓口となってきた給与振込口座さえ、「PayPay」などIT事業者の決済サービスに奪われかねない窮地に立たされている。

 銀行の既得権益が次々と崩されていく中、メガバンクのある幹部は「5行で始めるスマホ送金サービスを反撃の狼煙にしたい」と意気込むが、果たして思惑通りに進むか。

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