2021-06-07

【財務省】衆院選やコロナ「第5波」見据え、歳出圧力高まる

財務省は5月10日、国債や借入金など国の借金が2020年度末時点で1216兆円4634億円となったと発表した。

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う国債増発など財政支出が増えた影響で5年連続過去最大を更新。政府は国民へのワクチン接種を広げて感染拡大を抑え、経済活動の本格再開を目指す。ただ、海外から数万人の入国が見込まれる東京五輪が開催されれば、感染力が強い変異株を封じ込めるのは難しいともいわれ、景気好転の時期はいまだ見通せない。

 麻生太郎財務相は4月30日の閣議後会見で機動的な財政支出と財政規律の両立について「借金する中でも財政健全化を踏まえていなければ、財政に対する市場の信頼が失われ、結果として将来世代に不安を残す」と指摘。その上で「日本はもともと財政が厳しかったところにコロナがあり、厳しさが増しているのは事実だ」と述べた。

 一方で「経済再生しないと財政は健全化しない。『縮小再生産』ではなく『拡大再生産』でやっていくべきだ」と明言し、大型の財政出動も厭わない考えを示した。

 コロナ対策をめぐっては、感染長期化を見据えてすでに21年度補正予算編成の観測がくすぶる上、与党内では五輪前後の「第5波」に備え、全国民一律の給付金再支給の必要性もささやかれ始めるなど、今秋の衆院選を控え、歳出圧力は増すばかりだ。4月の日米首脳会談で菅義偉首相は防衛力強化をバイデン米大統領に明言しており、防衛予算の増加も想定される。

 財務省は、コロナ対策は「ケチらない」(主計局幹部)一方、コロナ以外の社会保障関係費については歳出カットのメスに「例外はない」(同)として、歳出抑制に知恵を絞る考え。コロナ対策で動きが緩慢な日本医師会に「首相は業を煮やしている」(幹部)ともいわれており、22年度当初予算編成に向けた駆け引きはすでに始まっている。

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