2021-06-03

【国土交通省】失敗に終わった鉄道減便 混雑を助長した「黒歴史」に

国土交通省や東京都などからの要請を受けて鉄道各社が実施した大型連休期間の減便が大失敗に終わった。3回目の緊急事態宣言に当たり、減便で人の移動を抑制しようとの狙いだったが、むしろ混雑を助長し、新型コロナウイルスの感染リスクを高める結果となった。宣言延長に伴う省内会議では減便の話題はなく、早くも触れたくない「黒歴史」になりつつあるようだ。

 東京都と大阪、京都、兵庫の関西3府県を対象に発令された3度目の緊急事態宣言。東京都などは鉄道各社に対し、平日への土休日ダイヤの適用などの対応を要請した。国交省も自治体の動きに合わせ、各社に対応を求めた。

 要請を踏まえ、JR西日本は終電繰り上げと昼間の減便を実施。JR東日本や首都圏の私鉄各社も平日に当たる4月30日、5月6、7日の朝の通勤時間帯を中心に運行本数を減らす計画を発表した。

 ところが実際には通勤客を減らす効果は出ず、西武鉄道は4月30日の状況を見て、早々に5月6、7日の減便を断念。JR東も6日に混雑が発生し、7日は通常ダイヤに戻した。JR西は「宣言中」は続ける予定だった減便を11日で打ち切った。

 減便を巡っては当初から、その効果に懐疑的な声が多かった。「出勤するために電車に乗るのであって『電車がないから出勤しない』とはならない」(私鉄関係者)との指摘はその一例だ。国交省も本音では効果がないと分かりつつ「人流を抑制する政府全体の方針を踏まえた対応」と苦しい説明を続けてきた。

 結果的に、鉄道事業者は減便対応に苦慮し、乗客は混雑に巻き込まれた。赤羽一嘉・国土交通相は「次なるときには適切に対応できるようにしたい」と語ったが、「次の減便」はあるのだろうか。

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