2021-05-31

ソフトバンクGが5兆円の最終利益 大半が含み益で変動リスク

孫正義・ソフトバンクグループ会長兼社長

アップル、サウジアラムコに次ぐ、純利益世界3位に──。

 ソフトバンクグループの2021年3月期決算は税引前利益5兆6705億円、純利益4兆9880億円。前期の1兆円近い赤字から一転、国内1位、世界3位の利益を叩き出した。

 利益の7割を占めるのが投資事業。外部の投資家から資金を募って運用する「ビジョン・ファンド」と、アリババやarm、GAFAなど、ソフトバンクG自らが行う投資事業がある。

 前期は韓国のネット通販会社「クーパン」や米宅食サービス「ドアダッシュ」などの新規上場の他、既存投資先の米「ウーバー」の株価上昇などが貢献。今期も中国の「滴滴」や「バイトダンス」、シンガポールの「Grab」などの上場が期待されるなど、今後も上場間近の“ユニコーン企業”への投資を拡大させる方針だ。

 孫氏は「継続して着実に利益が出ていくように改善の手を打っている。メディカル、フィンテックなど専門特化した専門家システム、インセンティブシステムが仕組みとしてできつつある」と投資事業への手応えを語る。

 機関投資家も「好調な株式市場が追い風となっている点は割引いて見る必要があるが、ファンドの投資ストラクチャーがしっかり機能している」(SMBC日興証券)と評価する。

 だが、好決算の翌日、米株式市場でハイテク株が売られると、ソフトバンクGの株価も連動して下がるなど市場の影響を大きく受ける事業構造となっている。

 また、無視できないのが中国リスク。ソフトバンクGによる直接投資の半分近くをアリババ株が占めているが、アリババの21年1―3月期は独占禁止法違反で当局から科された制裁金の影響で赤字に転落。

 孫氏は「中国のネット業界に対して、ある意味初めてかもしれない政策議論が行われている。中国も市場が健全に大きくなるためには規制も必要。いま語られているものは欧米でも行われている常識的な範囲を超えるものではない」と理解を示す。

 だが、アリババのジャック・マー氏へのコメントを求められると「詳しいことはメディアで読むくらいしかわからないので軽々なコメントは避ける」と慎重な姿勢を見せた。

 投資事業が拡大すればするほど、市場動向や政治問題が大きなリスクになっている。

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