2021-06-02

初乗り運賃値上げ、サブスクなど 鉄道需要の急減に直面する東急

大幅な需要減に見舞われる東急

「テレワークの普及を考えると、(利用が)完全に戻ることはない」と鉄道需要を見通すのは東急電鉄社長の渡邊功氏だ。来秋で創業100年を迎える東急がコロナ禍でもがいている。

 同社の2021年3月期決算における最終損益は562億円の赤字。「これまでのビジネスモデルが通用しなくなったということだろう」と幹部は語る。

 東急は通勤・通学の客を郊外から都心に運び、ターミナル駅を中心に沿線で百貨店やスーパー、ホテル、文化施設などを展開して収益を上げるモデルを構築。このモデルは他の鉄道会社にも多大な影響を与えた。

 そんな東急のビジネスモデルがコロナ禍で狂った。東急の定期券利用者は前年より3割以上減り、その規模は首都圏の私鉄の中では最大。渋谷に本社を構え、テレワークを積極的に取り入れるIT大手に勤める通勤客が沿線に多いことが背景にある。

 22年3月期は鉄道の定期外の利用は約2割回復すると見込むが、定期券利用者は1割未満の回復と厳しい状況が続く。この鉄道収入を少しでも上げようと、様々な手を講じている。

 その1つが初乗り運賃の引き上げ検討。23年度までに現行の運賃から数%程度引き上げる方針を明らかにした。

 もう1つが定期券保有者を対象にした月額定額サービスの展開だ。田園都市線を対象にした移動サービス「DENTO」では、鉄道とバスがそれぞれ100円で乗り放題になるチケットを販売したり、沿線の商業施設の割引クーポンを配信したりして通勤以外の「小さな移動」の掘り起こしを狙う。

 また、新たに始めたサブスクリプション型サービス「TuyTuy」では電動自転車やモバイルバッテリー、傘などを自由に借りられたり、全国のパン屋からパンの定期便が届いたり、花を受け取ることができる。担当する東急電鉄運輸計画課課長の盛田浩市氏は「利用者に、環境に配慮したサービスを“ついつい”体験してもらうことも大きな狙いの1つだ」と語る。

 不況期でも強いと言われた鉄道会社だが、コロナ禍では縮小均衡を余儀なくされる。耐え凌ぐ中で新たな需要の創造を探る。

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