2021-06-04

【増収増益の外食企業】「持ち帰り」「揚げ物」「低価格」 アークランドサービスHDの外食哲学

持ち帰りの家族需要を取り込んだ「かつや」(写真は神奈川県の横浜荏田東店)



 そんな両業態がコロナ禍の消費者の趣向にはまっている。自宅で料理をするにも揚げ物は時間と手間がかかる。また、持ち帰りが増えたことで、食事の選択肢が個人から家族へと変化。その結果、子供を中心としたメニューを選ぶ傾向が強まり、結果として揚げ物が選ばれる。

 さらに持ち帰りに対応していることも大きい。もともとロードサイド店が多いため、コロナ禍で「かつや」のテイクアウト比率は5割に、「からやま」に至っては6割近くに上るという。

 ただ一方で、揚げ物は飽きが来やすいメニューでもある。それでも好調な業績を達成した理由について伊藤氏はこう付け加える。「コロナ禍で世の中に暗いニュースが多い中、クスッと笑ってしまうような企画を常に打ち出し続けてきたからだ」。

 例えば、「かつや」や「からやま」では100円クーポンが有名。1回の食事ごとに必ずもらえるクーポンだ。もともと安いカツがより安くなるという仕掛けだ。さらにはコロナ禍でも巧みなキャンペーンを実施した。

 ご飯を隠すほどのボリュームのとんかつやナポリタンなどがのせられているテイクアウト専用の「全力飯弁当」(750円)は昨年4月に販売したところ、想定の3倍以上の売れ行きを見せ、完売店舗が続出した。他にも唐揚げが約18個入る「全力1キロから揚げ」(1000円)など食欲をそそる企画を打ち出し、顧客の獲得に成功している。

 ただ、同社の顧客層を見ると「かつや」は40代男性、「からやま」は30代男性や若いファミリーと男性が中心。そのため、女性客の取り込みが課題となっており、伊藤氏がその担当。そこで同社はコロナ禍でもタイ料理やシーフードを手掛ける外食企業を買収し、女性客向けの新たな業態開発を進めている。

 その1つがラム肉を楽しむ個性的な町中華「東京ひつじ食堂」。女性が1人でも気軽に食事やお酒を楽しめる飲食店として東京・目黒区に出店した。伊藤氏は「ラム肉は低カロリーでヘルシーな食材だと知られているのに、日常的に楽しめる店が少ないと感じていた。ラーメンなどのメニューにラムチョップがトッピングできるのは他店にはない面白さだと思う」と話す。


女性をターゲットにした「東京ひつじ食堂」

 カツ丼のチェーン店がないという発想から出発したアークランドサービスHD。3つの特徴を生かし、今後も消費者を楽しませながら新たな顧客を開拓していけるか。それが同社の成長のカギを握る。

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