2021-06-04

【増収増益の外食企業】「持ち帰り」「揚げ物」「低価格」 アークランドサービスHDの外食哲学

持ち帰りの家族需要を取り込んだ「かつや」(写真は神奈川県の横浜荏田東店)

コロナ禍で減益はもちろん、赤字に転落する外食企業が多い中、増収増益を達成した企業がある。カツ丼の「かつや」や唐揚げ専門店「からやま」などを展開するアークランドサービスホールディングス(HD)だ。マクドナルドやケンタッキーとは一味違う店づくりや商品開発でコロナ危機を乗り越えようとしている。

10%を超える営業利益率

「ロードサイド店舗の持ち帰り需要が牽引した。もともとテイクアウトには強い業態だったが、コロナ禍でその強みが際立った形だ」──。このように語るのはアークランドサービスHD専務取締役の伊藤永氏だ。

 同社は、とんかつのファーストフードチェーン「かつや」や唐揚げ専門店「からやま」などを主力業態に持つ外食企業だ。全国で約700店舗を展開しており、主力業態の「かつや」の価格帯は500~700円帯と低価格がウリだ。相場価格の1000~1500円を一気に引き下げて、お得感を演出する。

 また、店舗の立地にも特徴があり、約9割が郊外にある。さらに「かつや」はパチンコ店の近くに出店していることが多い。パチンコ客が「勝つ(カツ)」で縁を担ぐためだ。そんな同社の2020年12月期決算は売上高386億円(対前期比15・9% 増)、営業利益45億円(同1・2%増)と増収増益を実現。営業利益率も10%を超えた。

 そもそも揚げ物は調理に時間がかかると共に、習熟度も求められるなど、外食の中でも参入障壁は高い。とんかつ専門店といえば「新宿さぼてん」や「とんかつ和幸」といった中・高価格帯の店が中心だった中で、なぜ低価格の商品が出せるのか。

「かつや」ではパートなどの従業員が誰でも同じ品質でカツを揚げられるように特注のオートフライヤーを導入している。2~3年に1度は改良を重ねており、「今は第6~第7世代になっている」と、「かつや」の社長も歴任した伊藤氏はこう語る。

 しかも、オートフライヤー導入初期に4分近くかかっていた揚げ時間も今では3分を切るという。油の管理も濾過を頻繁に行うことで、油を捨てずに済む仕組みを構築。「温度や時間などを機械が管理することで、職人がいなくても安定した品質を維持できるようになった」(同)。

 こういった思想の背景には同社の成り立ちが関係する。同社はもともと新潟・三条市に拠点を置くホームセンター「アークランドサカモト」の外食事業部だった。外食大手のフラインチャイズ加盟店として様々な店舗を運営していく中で、自らがフランチャイズ本部になろうと決意。1998年から始めたのがカツを主体とする「かつや」だ。

 伊藤氏は「牛肉を使う牛丼は安いのに、牛肉より安い豚肉を使うカツ丼がなぜ高いのかに疑問を感じてカツ丼に注目した。既に天丼や牛丼の強豪はいたが、カツ丼は誰もやっていなかった。ただ、食べ物に関して技能を持つ職人が社内にいたわけではない。そこで、いかに自分たちで標準化できるかを試行錯誤していった」と話す。

 一方の「からやま」は唐揚げというシンプルな商品における差別化を徹底。浅草の唐揚げ専門店「からあげ縁(ゆかり)」とコラボレーションしたことから始まった。同店からレシピの教えを請うなど「ひと手間かけた手作り業態」(同)を貫く。ただ、「からやま」でもお得感の演出は忘れていない。塩辛は無料で食べ放題となっており、誰でもご飯に乗せて食べられるのだ。

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