2021-05-28

10年に及ぶカイゼンの積み重ねが奏功 トヨタが2度目の上方修正

2021年3月期決算に出席したトヨタ自動車役員陣

当初計画の通期営業利益5000億円から約2・2兆円へ──。コロナ禍の影響が通年で響く2021年3月期決算で、トヨタ自動車が2度の上方修正を実施するなど、普段からの努力が危機時に力を発揮した形だ。

 執行役員の近健太氏は「リーマン・ショック以降、ずっと取り組んできた『もっといいクルマづくり』や総原価改善、取引先との減災対策や在庫・品質の面での取り組みの成果だ」と話す。一例が損益分岐点となる連結販売台数を200万台程度、引き下げることに成功した点。

 特に21年3月期は半導体不足が影響をもたらした。他社が10万台規模の減産を見込む中でも、トヨタは「1~4カ月程度の在庫を保持する体制をとった」(同)ことで「足元で生産への大きな影響は出ていない」というレベルで抑えられている。この体制は東日本大震災を契機に約10年かけて構築した仕組みだ。

 さらに、1度目の緊急事態宣言を受けて稼働停止となった工場では、需要が回復した際の増産に備えたカイゼンを実施。1日当たり最大50台の増産をするために、「(生産スピードの)4秒の短縮を地道にやってくれた」(社長の豊田章男氏)。トヨタ独自の“ケイレツ”がコロナ危機下で威力を発揮した形だ。

 その結果、昨夏以降に国内外で需要が急回復した場合でも、人を増やさずに増産。世界的にも人気が高いSUV「RAV4」や「ハリアー」「ヤリスクロス」などの新型車種も安定的に市場に投入したことで、主力市場である北米の営業利益は前期比3割増。中国を含むアジアでも同15%増と増益を達成している。

 同社は22年3月期も増収増益を見込むが、原価低減活動などをさらに推し進め、更なる損益分岐台数の引き下げを目指す方針だ。背景には電動化がある。

 新たにトヨタは電動車の販売目標を30年に800万台とした。このうち電気自動車と燃料電池車は200万台。25年を目途に電動車を550万台とする従来目標を引き上げた。それに伴い、「電池容量で現状比30倍の車載電池が必要になる」(執行役員の長田准氏)と見ており、電動化への投資負担は益々増す。

 不況に強い姿を見せたトヨタだが、課題は電動化で世界のリーダーシップをとれるかどうか。次世代技術への投資の原資を稼ぎながらCASEの時代を生き抜く覚悟が求められる。

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