2021-05-28

菅の政権運営を左右する6月 全てはワクチン次第か……

イラスト:山田伸



 菅は政権発足後、初めての国政選挙となった4月25日投開票の衆参補選・再選挙で「3戦全敗」を喫した。「結果が達せられなかったことは残念だ。しっかりと結果を受け止め、これから頑張っていきたい」。痛手が冷めやらぬ4月30日、首相官邸で会談した公明党代表、山口那津男にそう伝えた。山口も「今後の選挙に対して自民、公明両党で協力して、しっかり臨んでいきましょう」と応じた。

 今後の選挙とは、6月25日に告示される東京都議選(7月4日投開票)と言える。もちろん、秋までに必ず衆院選が行われるが、その前哨戦と位置づけられているのが都議選だからだ。

 今年のように都議選と衆院選が同じ年に行われたのは、直近では2017年がある。

 この年の都議選で、自民党は都知事の小池百合子が率いる都民ファーストの会に苦戦し、議席を大きく減らした。だが、10月には当時の首相・安倍晋三が踏み切った「国難突破解散」による衆院選で、逆に自民党が議席を伸ばしている。

 とはいえ、自民党の衆院議員には09年の苦い記憶が根強く残る。

 自民党はその年の7月12日に投開票された都議選で惨敗し、都議会第1党の座を民主党に明け渡した。その後、衆院議員の任期満了が近づく中で、首相の麻生太郎が解散に打って出たものの大敗。衆院第1党の座を失い野党に転落した。このとき、公明党も改選前議席から10議席を減らしている。

 都議選の敗北は衆院選に与える影響は小さくない。何より自民党内の「菅おろし」の動きが強まりかねない。「選挙に勝てる総裁」に替えようと、公然と自民党総裁選の前倒しを求める議員が増える可能性もある。

 公明党も、前回の都議選では都民ファーストの会と連携して勝利したが、今回は国政との「ねじれ」を解消すべく、自民党と「復縁」した。

「自公選挙協力の効果を最大限に出せるように対応する」(山口)方針で、国政選挙並みに重視する都議選で失速することは避けたいところだ。

 ただ、東京都の緊急事態宣言が5月末まで延長されたことで、公明党の支持母体・創価学会の組織力をなかなか発揮できずにいるとされ、厳しい選挙になることが想定される。

 自民党にとっても、都議選までにワクチン接種が遅れたり、東京五輪の中止が決まったりしたら、都民から厳しい視線が向けられ、苦戦することになる。

 ただ、09年と大きく異なるのは、当時の民主党は政党支持率も高く、勢いがあったことだ。今の野党は支持率低迷から脱することができていない。

 枝野は5月10日、衆院予算委員会で質問を終え、国会内で記者団に「首相の答弁は悪い意味での官僚答弁で、リーダーとして、この危機を乗り切る覚悟と危機感が無く、甚だ残念だ」と語り、菅との対決姿勢を鮮明にした。

 だが、野党にとって国会会期末の「恒例行事」とされる内閣不信任決議案の国会提出については、「首相は決議案を提出すれば、衆院を解散する可能性がある」とした上で、「現状は解散・総選挙ができる状況ではなく、決議案の提出はできない」と語った。

 コロナ感染の第4波の真っ只中で、衆院解散につながることは避けるべきだとの認識を示したようだが、野党にとって内閣不信任決議案の提出こそ、時の政権に対する最大の意思表示になる。解散を避けるために提出しないというのでは、コロナ対応での菅政権の“失策〟を期待しているようにも映る。

 そのため、野党内からも「現状の不十分なコロナ対策の変更を促すことにもつながるので、最初から提出しないと決めつける必要はない」(国民民主党代表の玉木雄一郎)といった批判の声が上がる。

 一方、菅は「不信任案提出は衆院解散の大義に当然なる」など「伝家の宝刀」を抜くそぶりをみせながら野党の出方を探る。国会会期末に向け、都議選やコロナ対応をにらみながらの神経戦が続く。

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