2021-05-27

伊藤忠が商社首位に再浮上 丸紅を除く6社が減益

石井 敬太・伊藤忠商事社長

「他社が大きく減益となる厳しい経営環境の中、当社の強みである分野分散のきいた景気耐性のある強固な収益基盤を改めてお示しすることができた」

 こう語るのは、伊藤忠商事社長の石井敬太氏。

 伊藤忠が2021年3月期の決算を発表。最終利益は4014億円(前年同期比19・9%減)となり、利益、株価、時価総額全てで商社首位となった。全セグメントで減益となったが、金属やエネルギー・化学品、情報通信分野が堅調に推移。22年3月期は最高益となる5500億円の見通しで、「当社初の三冠を達成したが、今後も変わらず謙虚に継続していくことが重要」(石井氏)としている。

 世界中でビジネスを展開する総合商社は、米中対立の激化や新型コロナによる経済活動自粛の影響を受けやすい。そのため、21年3月期の決算で大手7社の最終損益を見てみると、20年3月期に赤字となった丸紅を除く6社が減益となった。

 2位に浮上したのが三井物産。鉄鉱石や化学品事業が堅調で3354億円(同14・3%減)を確保。22年3月期も4600億円と2位をキープする見通しで、丸紅は2253億円と黒字転換した。

 20年3月期に首位だった三菱商事はグループ会社の減損損失が響いた。三菱自動車工業やローソンの減損損失などを計上し、1726億円と同67・8%の大幅減益となった。

 各社が気を揉むのが、コロナの収束時期と米中対立に端を発する地政学リスク。三菱商事社長の垣内威彦氏は「これまでは政治と経済は切り分けてグローバル経済が形成されてきたが、今後は政治と経済が一体化している中国の動向次第では、さらにデカップリング(分断)が懸念される経済情勢に注目していく必要がある」と指摘する。

 その意味では、約6千億円を投じて中国中信集団(CITIC)の株式を取得し、中国強化を鮮明にしている伊藤忠も中国リスクが背中合わせ。今後は脱炭素やデジタル化対応といった要素に加えて、各社のリスクヘッジ策が問われそうだ。

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