2021-05-22

【いま注目のNFTとは?】 デジタル作品が75億円で落札 なぜスタートバーンが“アート市場”で注目されるのか?

シールタイプの『Startbahn Cert. 』のICタグと証明書情報を閲覧できるビューア


マンガをアートとして
販売する集英社

「アート×ブロックチェーン領域のインフラを作っています」

 スタートバーン代表取締役CEOの施井泰平氏はこう語る。

 アート市場では作品の信用性を担保するため「鑑定書」や「証明書」を発行するが、不動産などと異なり、公式な登記場所がない。鑑定書が紛失してしまうこともあり、ある調査結果では美術作品の50%が贋作とも言われている。

 そこで、スタートバーンはブロックチェーンを使って「みんなで使えるパブリックな登記場所」として『Sスタートレイルtartrail』を開発。

「公共のアートを登録して共有するという位置づけのため、自社のプラットフォームではない」という。『Startrail』はアート作品の公共の登記場所であり、インフラという考えだ。

 ビジネスとしては「ブロックチェーンのインフラでマネタイズ(収益化)するのではなく、そこにつなげるツールを提供したり、企業とのコラボレーションによる開発費をいただく形」で収益を得るという。

 具体的には、アート作品にICタグ付きのブロックチェーン証明書『Cert.(サート)』を発行・管理する自社サービス『ス タートバーンサ ート』を展開。ICタグを通じて作品の来歴などの情報を閲覧できるサービスだ。

 作品の“出元”が重要なため、現在はギャラリーなど法人向けに『Cert.』を販売。個人のアーティストもギャラリーを通じて作品を登録している。

 提携・パートナー先には、出版社・集英社の名前も。

「『マンガはアートである』という考えのもと、マンガを高解像度にして、うちの『Cert.』を貼って販売している」という。

 集英社は2008年からマンガ原画のデジタルアーカイブ事業に着手。今年3月、スタートバーンのブロックチェーン証明書を活用したマンガアートの販売サービス『SMAH』を開始。尾田栄一郎氏の『ONE PIECE』や池田理代子氏の『ベルサイユのばら』などの作品を販売している。

 施井氏は経営者の他、芸術家としてアート活動も続けている。創業も「2006年、テクノロジーを活用すればアート産業は拡大するという仮説のもと、どんなインフラを作れるかを構想するプロジェクト」を手掛け、その延長線上で起業した形だ。

 15年には、二次流通後も作家に利益が還元される仕組みを作ろうとオークション機能付きウェブサービスを開始。だが、別のオークションサイトで売買されると作家への還元ができなくなるという課題を解決するため、16年からブロックチェーンプロジェクトを開始。現在のサービスに至っている。

 NFT市場の盛り上がりで、様々なブロックチェーンを使ったNFTが登場しているが、各々に互換性がないという課題がある。その点「『Statrail』につなげば、互換性を持たせて、他のサービスと横断して作品が売買でき、還元金ももらえる」とインフラとしての強みを語る。

 日本発の公共プラットフォームを作り、そこから派生するビジネスで成長を図るスタートバーン。GAFAMが席巻するIT業界で、日本発のプラットフォームづくりに期待がかかる。

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