2021-05-21

日本郵政が豪トールの一部事業を売却 国際物流の成長戦略示せず

増田寛也・日本郵政社長

「買収以降、様々な施策を通じて成長を目指してきたが、豪州経済の悪化などを受けて、業績は悪化していった」と話すのは日本郵便社長の衣川和秀氏。

 日本郵政(増田寛也社長)は子会社の豪国際物流会社・トール・ホールディングスの一部事業を豪州の投資ファンド・アレグロに売却することを発表。売却するのは豪州国内での宅配を手掛ける「エクスプレス事業」で、売却金額は約7億円。

 輸出入手続き業務などを手掛ける「フォワーディング事業」、物流施設事業などを手掛ける「ロジスティクス事業」は継続する方針だが、トール事業は赤字が続き、21年3月期に日本郵政は674億円の特別損失を計上する。

 日本郵政が約6200億円を投じてトールを買収したのは2015年のこと。社長の西室泰三氏(当時)が主導した。だがその後、業績が悪化し、17年3月期には4003億円の減損損失を計上する事態にもなった。

 特にエクスプレス事業では豪州国内での競争激化、2度にわたるサイバー攻撃被害、そしてコロナ感染拡大で打撃を被り、業績が低迷。これを受けて経営陣の刷新やコスト削減を進めてきたが効果が上がらなかった。

 だが、継続する2事業も豪国内物流事業を基盤に行っていたものだけに、今後もトール再生の道筋は見えない。今後について「議論が十分にできていない」(衣川氏)という現状。

 トール経営陣とのコミュニケーションを担っているのは、日本郵便専務でJPトールロジスティクス社長の小野種紀氏とされる。米ゴールドマン・サックス、三井住友フィナンシャルグループでM&Aを手掛けてきた人物だが、小野氏以外にパイプがないとも見られており、先行き不透明感が漂う。

 いずれ、ゆうちょ・かんぽの株式は売却し、残るのは日本郵便。増田体制では、その物流で生き残る道筋を描けていない。3月に発表した楽天との提携で〝果実〟を得ることができるか。

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