デスティネーションストアを目指して
コロナ危機で流通業も影響を受け、百貨店などは赤字経営に転落し、大手スーパーやコンビニ各社も減益で苦しむ。同じチェーンストアでも、生活必需品を扱う食品スーパーは健闘と明暗が分かれ、混沌とした状況。
似鳥氏は、自分たちの進路、選択として、「デスティネーションストアを目指す」と言い続けてきている。
デスティネーションストア(Destination store)。Destinationは目的地、行く先という意味で、デスティネーションストアは買い物をするときに、主要目的店になるということ。
つまりは、お客を吸引する力、集客力のあるお店ということである。それには何が必要か?
「お値段以上の(「お、ねだん以上」)というデスティネーションストアですね。顧客は、業界で1位のところに寡占されるというか。デスティネーションというのは、カジュアル衣料であれば、ユニクロとか、ホーム関係だとニトリになる」と似鳥氏は語る。
お値打ちの商品を消費者に届けられるかどうかが勝負。もっと言えば、お客に信頼される商品を他店より多く揃え、他店で買ったら後悔するような品揃えができるかどうかというせめぎ合いの時代。
「アメリカでいうと、ウォルマートです。それからECのネット販売のアマゾンです。いまアマゾンは猛烈な勢いでウォルマートに迫っている。ウォルマートも毎年伸びているんですが、アマゾンのほうが勢いがあって、伸びているんですよね。ウォルマートも負けじとEC企業を猛烈に買収、アマゾンもスーパーのホールフーズマーケットを買収している。
(ネット販売の)伸び率が2倍以上ですごい戦い。世界一競争が激しい」
こうした状況下、グローバル競争をどう生き抜くか──。
「日本は米国より10年以上遅れている」
「日本は10年か15年ぐらいアメリカから遅れていると思うんです。日本には本当のディスカウントストアがない。イオンとかイトーヨーカ堂とか、ディスカウントストアを目指したんだけれども、結局、できなかったんですよ」
だとすれば、日本のディスカウントはどこへ行ったのか?
「日本のディスカウントは専門店に移った。ユニクロであり、ニトリでありと、専門店のほうにきてしまった」
流通の変化は激しい。GMS(ゼネラル・マーチャンダイズ・ストア、総合スーパー)の本場、米国でも主役は目まぐるしく変わった。
1950年代にはA&Pが登場。その10年後にはシアーズが存在感を高めたが、さらに10年後にはKマートが全盛期を迎えた。その10年後にはウォルマートが登場し、今に至っている。
高額品を扱う百貨店は劣勢。ブルーミングデールズ、ニーマン・マーカス、サックス・フィフス・アベニューなどは健闘しているといわれるが、百貨店の退勢は否めない。
「メイシーズも縮小している。人類の歴史から言うと、高額なところから、だんだん中価格になり、そして低価格になってディスカウントになるんですよ。人類の法則は、常に安いところに流れていく。そして品質は良いものが求められる」
今は、デジタルトランスフォーメーション(デジタル革命)が言われ、ネット通販から出発したアマゾンと、リアル店舗から成長発展してきたウォルマートがぶつかり合う。
「アマゾンは食品ストアのホールフーズの数百店舗を1兆5000億円で買収した。ホールフーズは高級食品スーパーだったのが、それでは成り行かなくなった。それで値段をどんどん下げていく。低価格品を置いてなかったのを、今は置いており、良い状態だと。一方のウォルマートはネットにも向かう。だから、リアル店舗とネットの両方持っていないと、やっていけない」
ニトリはどうか?
「うちも2004年からネット販売を始めており、16年経っています。日本の平均(流通業のネット販売比率)は6%。うちがいま約10%で年間700億円ぐらいの売上で、今後、ますます伸びていく」
混沌とした状況が続く中、大事なのは先制主義であり、デスティネーションストア戦略を実践していくことと強調する似鳥氏である。