2021-05-19

野村HDのアルケゴス関連損失 3000億円超に拡大

奥田健太郎・野村ホールディングスグループCEO

米国法人トップにJPモルガン出身者


「多額の損失を公表して以降、多くの皆様にご心配をおかけしている。本事案を認識して以降、全社を挙げて、事態の収束に向けて動いてきた」と話すのは野村ホールディングスグループCEO(最高経営責任者)の奥田健太郎氏。

 2021年4月27日の野村HDが発表した21年3月期決算(米国会計基準)では、当期純利益が前年同期比29・4%減の約1531億円となった。

 この要因は3月下旬に公表した米投資会社・アルケゴス・キャピタル・マネジメントとの取引による損失。当初は2200億円程度としていたが、その後21年3月期に約2457億円、22年3月期に625億円の損失を計上することになり、マイナス影響は約3100億円に拡大。

 アルケゴスは主に富裕層が自らの資産を長期に運用する目的で設立する「ファミリーオフィス」という形態で、他の金融機関のような規制を免れていた。

 だが、高リスク運用に失敗し、損失を出した。同社を巡っては“稼げる”ことから野村HD以外にもクレディ・スイスやモルガン・スタンレー、UBSといった金融大手が群がって損失を被った一方、ゴールドマン・サックス、ウェルズファーゴなどは影響を最小限にとどめた。また、バンク・オブ・アメリカはそもそも取引をしていない。

 奥田氏はこうした事態を受けても「海外ビジネスに大きな変更はない。日本の顧客からも海外への関心は高く、中でも米国を見ている」とした。そこで米国でのガバナンス強化に向け、元JPモルガン・アセットマネジメントCEOのクリストファー・ウィルコックス氏を米国法人トップに任命した。

 米国の議員の中からは、ファミリービジネスにもヘッジファンド並みの規制をかける案も出ている一方、前述のように多くは長期・安定的な運用をしているため、そのような規制はなじまないという意見もある。

「ファミリービジネスは今後も重要な取引先」(北村巧・野村HD財務責任者)として、今後も注力する方針だが、アルケゴスのような“危ない”顧客を見抜くような高度なリスク管理体制を築くことができるか。

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