2021-05-17

防衛大学校長9年の任期を終えて今、感じることとは? 答える人 國分 良成 前・防衛大学校長

國分 良成氏




生まれ変わったら同じ大学に入りたいか?



 ―― 先ほど、一般の大学と防大の違いが分かると話していましたが、改めて、防大の良さはどんなところにありますか。

 國分 これはやや財界には微妙な話ですが、わたしはよく同級生に、生まれ変わったら同じ会社に入るかどうかを聞くのですが、だいたい答えは「ノー」です。これは大企業だろうが、中小企業だろうが、変わりません。ただ、大学に関しては、「同じ学校入りたいか」と聞くと、慶應の卒業生などでは「はい」が多い。

 実は防大の卒業生は「はい」と答える人が圧倒的に多くて、シニア世代ではほぼ全員が再び入ると即答します。これはすごいことで、防大ですから、就職先が自衛隊であることも決まっているわけです。「それでもいいのか?」と聞いても「もちろん」と答えます。

 この理由を尋ねると、やはり同期と先輩・後輩の絆が一生固くつながるからだと。寮での集団生活や訓練は日本で最も厳しい大学生活だと思うけれど、仲間同士で同じ釜の飯を食べながら過ごした生活はかけがえのないものになっているんです。その意味でも、本当に防大は最高の学校だと思います。

 ―― この1年間、コロナ禍で大学も企業もリモートが増えてきましたが、やはり、人と人とが触れ合うことで感じることは多いですよね。

 國分 仰る通りです。やはり、これからはデジタルの世界にどんどん入っていかないといけないし、サイバーセキュリティなどへの対応はもっと早くしないといけないと思います。しかし、サイバー空間であっても、それを動かしているのは人です。人が生き、学校に行ったり、仕事をしたりするのも信頼関係が無かったら成り立ちませんよ。

 3月の卒業式でも話したのですが、わたしの人生の中で防大とその学生たちと出会えたことは、最大の喜びであり、幸せです。これは心から胸を張って言えることですよ。

 ―― 今年の卒業式が最後だったと思うのですが、具体的にどんな話をされたのですか。

 國分 それについては経緯があるのです。4年前の卒業式後の午餐会で、卒業生の家族を代表して、あるお母様がお話してくれました。実は、この方は今年2月に米アラバマ州で飛行訓練中に墜落死した一等空尉のお母様です。

 彼は防大生時代に大隊学生長という学生約400人のリーダーをやっていたので、時々飲み会などで一緒になることもあり、わたしも個人的に彼をよく知っていました。

 そのお母様はこの午餐会で、息子はまだ子供だと思っていたけれども、彼は防大に入って「命にかかわる親不孝とも思えるこの進路を応援してくれて感謝している」と語った話を紹介してくれたのでした。

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