2021-05-14

「水素・アンモニアは天然ガスの進化系」INPEX・上田隆之のエネルギー変革論

上田隆之・INPEX社長




石油・天然ガス開発で培った技術を応用できる



  “脱炭素”が世界的な潮流となる中、同社は2050年の“ネットゼロカーボン社会”を目指すことを発表。今後は、上流事業のCO2低減、水素事業の展開、再生可能エネルギーの取組強化と重点化、カーボンリサイクルの推進と新分野事業の開拓、森林保全によるCO2吸収の推進、の5分野に注力していく考えだ。

 同社は年間200~300億円をこの注力5分野に向けて投資する方針。上流事業のCO2低減には、同社がこれまで培ってきた技術や資産を活用したCCUS(CO2の回収、利用、地下貯蔵)への取り組みを加速。3月1日付で社長直属の組織「水素・CCUS事業開発室」を新設した他、地熱や洋上風力などの再エネ開発に加え、“究極のエネルギー”と言われる水素の開発を急ぐ。

 水素はエネルギーとして使用する時にCO2を排出しないのだが、製造方法や運搬方法に課題がある。水素は通常気体として存在するため、液体にするにはマイナス260度くらいに冷却しなければならない。体積当たりのエネルギー密度が小さいこともあって、輸送・貯蔵方法が大きな課題となっている。それでも上田氏は低コスト、脱炭素の水素を大量に製造するには、CCS(CO2の回収、地下貯蔵)を組み合わせた天然ガスを利用することが最も効率的だという。

「当社のビジネスは地熱や水素との親和性がものすごく高い。地熱開発はこれまで石油・天然ガス開発で培った技術を応用できるし、当社は天然ガスの採掘技術や運搬するための液化技術などをすでに持っている。これまでも環境に配慮してきてはいるが、今後は更に持続可能な形にビジネスを変えていかないといけない。多様なエネルギーをよりクリーンな形で安定的に供給することで、ネットゼロカーボン社会に向けた変化に積極的に対応していきたい」(上田氏)

 エネルギーをいかに確保するか、また、安定供給をいかに果たすかは同社にとっても、日本全体にとっても大きな課題。それに加え、現在は経営の環境対応が求められるようになった。

 世界は脱炭素へ向けて一気に舵を切った。そうした時流に遅れないよう事業ポートフォリオの変換を急ぐ同社。社名変更には新時代を切り拓こうとする上田氏の決意が込められている。

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