2021-05-12

中国・新疆綿の使用を巡りユニクロや良品計画が難しいかじ取り

中国・新疆ウイグル自治区で強制労働問題が衣料品チェーン各社の経営を揺るがせている。

 米国やEU(欧州連合)が少数民族ウイグル族への扱いが人権侵害にあたるとして対中政策を決めると、中国政府が「強制労働は虚偽」として反発。米ナイキやスウェーデンのへネス・アンド・マウリッツ(H&M)などが、人権侵害を理由に新疆ウイグル産の綿花を使わないと表明するも、中国国内で不買運動が広がっているからだ。

 日本でもユニクロや良品計画などが名指しされており、4月8日の決算会見で、ユニクロのファーストリテイリング会長兼社長の柳井正氏は「われわれは政治的には中立な立場でやっていきたい。ウイグルに関してはそれこそ政治的なことなのでノーコメント」と話した。また、良品計画も14日に「法令または弊社の行動規範に対する重大な違反は確認しておりません」とのコメントを発表している。

 ファーストリテイリングや良品計画は中国で成功する数少ない日本企業と言われており、すでに中国事業は両社をけん引する収益の柱になっている。このため、「過度に中国政府を刺激する発言をすれば、中国市場を失うリスクが出ている」(流通業関係者)のだ。

 新疆地区は中国産の綿花の8〜9割を占める広大な産地。このため、世界中の多くのアパレルメーカーが新疆綿を使用して、自社製品を製造している。中国で事業を展開する企業にとって、新疆綿に代わる調達先を見つけ出すことは容易ではないだろう。

 ある流通大手首脳は「これだけサプライチェーン(供給網)が世界中に拡大すると、どの農場や工場を使っているか末端まで把握しきれていない面もある。うちも知らぬ間に新疆綿を使っているかもしれない」と話す。

 米バイデン政権は6月の先進7カ国首脳会議(G7サミット)で、対中圧力を強めるよう参加各国に促す方針を明らかにしたばかり。一方、中国政府は新疆ウイグル自治区の人権問題への国際社会の介入をけん制しており、日本企業にとっては難しい選択を迫られている。

 要は、人権問題を無視して新疆綿の使用を続ければ先進国から非難され、新疆綿の使用をやめれば中国市場という巨大マーケットを失いかねないという板挟み。人権問題や米中摩擦の中、成長市場である中国とどう向き合うか、企業には難しい選択を迫られる。一筋縄ではいかない時代に入った。

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