2021-05-11

温室ガス46%削減目標 高い理想掲げるも達成厳しく

写真はイメージ

電事連の池辺会長は早急な計画を不安視



 4月22日に開かれた米国主催の気候変動サミットで、菅義偉首相が2030年度に温室効果ガスを13年度比で46%削減する目標を表明した。

 日本はこれまで、実現可能性が高い対策の効果を積算する「積み上げ方式」で削減目標を策定してきた。しかし、今回は、地球温暖化対策を求める強い国際世論を背景に、現実的な想定よりも高い理想を掲げることを余儀なくされた形だ。

 新たな目標では、13年度比26%減としていた従来目標をどこまで引き上げるかが焦点だった。温室ガスの削減には発電時に二酸化炭素(CO₂)を出さない太陽光や風力といった再生可能エネルギーの拡充が欠かせない。

 しかし、欧州などと比べて平地が少ない日本では太陽光パネルを増設できる土地は限られる。

 政府が切り札と位置付ける洋上風力は適地を選定する手続きなどに数年を要する見通しで、30年時点で稼働するのはごく一部にとどまりそうだ。原発もCO₂を出さない点では同じだが、東京電力福島第1原発事故を受けて安全性への不安が高まり、再稼働がどこまで進むかは見通せない。

 経済産業省内では、現実的な対策の積み上げでは13年度比40%程度の削減が限界との見方が強かった。小泉進次郎環境相は建物屋上の太陽光パネルの設置などで更なる上乗せが可能との見方を示すが、具体的な検討はこれからだ。目標の調整にかかわった政府関係者は「46%には積み上げと『野心』が含まれる」と話し、従来目標よりも楽観的な側面があると認める。

 ただ、国際世論に配慮して政治主導で野心的な目標を公表することには産業界も不安視。電気事業連合会の池辺和弘会長は「電力の安定供給を決して犠牲にしてはならない。30年度という限られた時間軸を考えれば、再エネの導入には一定の限界がある」と再生エネへの転換は慎重に進めるべきだと指摘する。

 経産省内でも「あまりに達成困難な目標だと民間企業に本気で取り組んでもらえなくなる」(幹部)と先行きを不安視する声が聞かれており、実現へのハードルは高いといえそうだ。

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