2021-04-30

【農林水産省】ブランド果樹の保護を強化 改正種苗法が施行

改正種苗法の一部が4月1日施行された。ブドウなどブランド果樹の農作物新品種の国外持ち出しを規制するなど保護強化により、日本の農産物のブランド価値を高めることが狙いだ。

 改正法は、開発者が新品種を登録出願する際、栽培地を国内または特定の都道府県に限定できるようにし、違反行為に対して流通や販売の差し止めを請求する権利を認める。購入者が大量に海外に持ち出すなど悪質な行為に及んだ場合、10年以下の懲役または1千万円以下の罰金(法人は3億円以下)が科される。

 政府を法改正に突き動かした出来事は、日本産高級ブドウ「シャインマスカット」の苗木が中国と韓国に流出し、現地で無断栽培が判明したことだ。安価な中韓産が東南アジア市場で販売され、高品質な日本産の輸出拡大にブレーキが掛かっている。

 ブドウ以外にもイチゴやかんきつ、リンゴなど国外に持ち出された事例は疑い分も含めれば相当な数に上るとされる。種苗法改正は遅きに失した感は否めないが、「第2のシャインマスカット」のような悲劇的な事例をこれ以上生まないためにも、新品種の保護徹底を急ぐ必要がある。

 国会審議などでは、収穫物から種子を採取して次期作に使う「自家増殖」の制限に大きな注目が集まった。野党や市民団体などは、開発者に支払う許諾料が高額になる懸念があるとして猛反発した。ただ、規制対象は新品種のみで、「コシヒカリ」など大半の品種は対象外。許諾制は来年4月に導入する。

 そもそも、時間とコストをかけて第三者が開発したものをただ同然で使えると一部で捉えられている風潮自体がおかしい。開発者が正当な対価を得るためにも、常識的な範囲の許諾料を取るのは自然なこと。そうでないと、開発の意欲が湧かず、競争力が低下した日本の農業がますます衰退する懸念がある。

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