2021-05-01

コロナショック・未知のウイルスにどう対峙すべきか? 答える人 濱田 篤郎・東京医科大学特任教授

濱田 篤郎・東京医科大学特任教授 渡航者医療センター部長


ポストコロナを見据えてBCP対策を


 ─ 先生が指摘されるように、奥地の開発とグローバル化が今回の感染症拡大を生み出したということですが、もはやグローバリゼーションを止めることはできません。企業経営者はどんなことを心掛けるべきだと考えますか。

 濱田 仰る通りで、グローバル化はもう止めることができません。現在、日本は鎖国状態ですが、ポストコロナを見据えて、どのように国を開いていくかは非常に難しい問題です。
中長期的には、経済評論家の寺島実郎さん(日本総合研究所会長)が以前から提唱されているように、グローバル化に関わる仕事をしている方々に国際連帯税のようなものをかける。

 つまり、グローバル化で売上を得るような職業の方々には特別な税をかけて、それを原資にして世界全体の検疫体制を強化するとか、監視体制を強化するということが必要です。課税されるのは嬉しい話ではありませんが、そういうのを新たな財源にして使うのも一つの手段だと思います。

 また、短期的には、コロナのワクチンを国民がどんどん打っていくことですね。新型コロナは日本だけの問題ではなく、世界的な問題ですから、今後はワクチンを打つことが国際的なパスポートになるでしょう。ワクチンを打っていない人は入国できないという流れになるかもしれません。その意味では早くワクチンを打っておくべきです。

 ─ とはいえ、ワクチンの数は限られていますよね。

 濱田 そうなんです。今、日本では米ファイザーのワクチンしかありませんが、5月や6月になって米モデルナや英アストラゼネカのワクチンも使えるようになってくると、国民の皆さんにも徐々に行き渡るのだと思います。

 ただ、いきなりは難しくて、8月、9月くらいから一般の人の接種が始まり、11月頃には国民の6割ぐらいが免疫を持っていることを期待したいですね。

 ─ そもそも、ワクチンはどこまで有効なんですか。

 濱田 ワクチンを打てば発病しないことは確かですが、感染しないかどうかはまだ分かっていません。あと2~3カ月もすれば感染も防げるということが分かってくると思います。

 もっとも、企業としては今後、新しい感染症が流行る可能性も十分に考えられますので、再び大きな感染症の流行で国境が閉ざされたりする可能性がある。ですから、その辺の危機管理というか、サプライチェーン(供給網)のあり方を含めて、BCP(事業継続計画)対策は考えておいた方がいいと思います。

 ─ サプライチェーンはいろいろ考えさせられますね。

 濱田 今後はブロック経済のようなものが安全だという考えになっていくのかもしれませんね。例えば、オーストラリアとニュージーランドは二国間だけの移動は自由に認めて、他の人たちは入れません。二国間だけで自給自足が賄えるし、商売にもなる。欧州にはEU(欧州連合)があるし、日本も今は止めていますが、ビジネストラック・レジデンストラックといって、日本と中国、韓国、東南アジアだけは動けるモデルをつくりました。

 やはり、日本は近隣諸国と連携して新たな感染症が流行した時のために、資材の供給やマーケットが維持できるような形を国としても、企業としても、きちんと考えておく必要があると思います。

(「財界」5月12日号より 取材は3月26日に行われた)

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