2021-05-01

コロナショック・未知のウイルスにどう対峙すべきか? 答える人 濱田 篤郎・東京医科大学特任教授

濱田 篤郎・東京医科大学特任教授 渡航者医療センター部長

動物の感染症が人に広がり世界的に拡大してしまった


 ─ 新型コロナウイルス感染症による混乱は1年を超えても収まりませんが、この1年をどのように見ていますか。

 濱田 今回の新型コロナの問題は、今まで起きた感染症の中でも非常に特殊な形だと思います。これまでもペストやコレラ、結核など、様々な感染症が流行してきましたが、今回の新型コロナというのは100年に一度ではなく、1千年とか2千年に一度の感染症だと思います。

 ─ 1千年に一度ですか。

 濱田 そう考えていただいていいと思います。

 これまでのペストやコレラ、あるいは天然痘もそうかもしれませんが、こうした感染症はもともと人の感染症で、風土病として流行っていたものが広がるという形でした。

 ところが、新型コロナは動物の感染症が人に広がって世界的に拡大してしまった。こうしたことは少なくとも過去1千年の歴史を見てもありません。2千年ぐらい前まで遡ればあったのかもしれませんが、その意味では有史以来の危機と言っていいでしょう。

 原因はいろいろ考えられますが、簡単に言うと、土地の開発が進んで奥地に人が立ち入るようになった。その結果、動物だけが持っていた未知のウイルスに人が接することによって、それが広がってきたと。

 2003年に中国で重症急性呼吸器症候群(SARS)が流行した時も、動物から人に感染したわけです。もともとコウモリが持っていた病気がハクビシンなどの小動物にうつり、そこから人にうつったと考えられています。

 ─ 人が食べて感染するということですか。

 濱田 中国ではハクビシンなどを食べる習慣もありますが、食べて感染したわけではなく、市場などで生きたまま販売されていた動物に接触して感染したようです。今回の新型コロナもコウモリがもともと持っていたものだろうと言われています。

 ただ、SARSの時と違うのは、今は当時よりも急激にグローバル化が進んで、人々が世界中を移動するようになった。その結果、流行も世界中に拡散してしまったのです。

 ─ 開発の促進とグローバリゼーションの進展が、1千年から2千年に一度の感染症を引き起こしてしまったと。

 濱田 はい。さらに新型コロナが怖いのは、例えば、SARSにしても、インフルエンザやエボラウイルス病(エボラ出血熱)にしても、発病した人が周りに感染させます。だから、発病していない人は心配なかった。

 ところが、今回の新型コロナは発病する前の人も周りにうつすのです。発病前の元気な人が動き回っている間に周りに感染させてしまうので、気づかないうちに広がってしまうのです。

 もう一つ厄介なのは、爆発的な感染拡大がおきると、そのために医療が崩壊してしまうのです。先進国は今まで医療体制が万全だと言われてきたんですが、あっという間に感染者が増えると病院がいっぱいになり、助かる命も助からなくなる。

 新型コロナにかかった人の致死率は2%を切るくらいですが、医療崩壊が起こると10倍ぐらいに跳ね上がる。イタリアでは一番ひどい時に20%ぐらいになりました。そういう怖さのある病気だということです。

 ─ 現在、米国では3千万人が感染し、死者も54万人(取材時の3月26日時点)出ているわけですね。でも、欧米諸国に比べて日本の感染者や死者が少ないのは理由があるんですか。

 濱田 これはまだよく分かりません。米国の場合、CDC(疾病予防管理センター)という感染症対策を一元管理して行う組織があり、危機管理体制がしっかりしています。そんな米国でも50万人以上の人が亡くなり、第一次大戦、第二次大戦の戦死者以上になっています。

 これまでの感染状況を見ると、米国や欧州で感染者数が多くて、東アジアや東南アジアは少ない。これは遺伝的な要素もあるかもしれない。決して日本だけが万全な対策で防いでいるのではないと思います。

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