県の医療統括官が司令塔 ── 患者の目線に立った病院経営を実践しているのですね。一方、現在の医療体制では民間病院が全国の病院の8割を占めているものの、公立病院がコロナ対応では中心になりました。この公立病院と民間病院との連携についてどう考えますか。
竹島 当院はコロナ患者の中でも軽症、中症までは対応しています。重症患者には人工呼吸器を気管内挿管して処置したり、ECMO(エクモ:体外式膜型人工肺)を使ったりするのですが、そのためには専門医が必要です。当院にも専門医はいるのですが、重症患者まで扱えるマンパワーがありません。
ある程度、症度で病院ごとの役割を区切っているわけです。ですから、取手の病院から重症患者が中症になったので診てくださいと頼まれ、当院が受け入れるケースはあります。さらに茨城県では、コロナ関連を専門とする先生が県の医療統括官となって症度ごとに病院を振り分けるといった対応をしています。
── 司令塔ですね。
竹島 はい。茨城県ぐらいの大きさだと、案外、司令塔が機能するということです。県でも調整ができるわけですからね。
── さて、つくばセントラル病院は出産したお母さんをケアする「産後ケア」にも力を入れていることで有名ですね。
竹島 誰もが安心して子供を産み育てられる街づくりがキーワードになっています。背景には人口減少や地方創生があります。日本は2009年から人口減少が始まっているのですが、妊娠や出産支援、子育て支援という大事な部分で他国に比べても遅れているように思います。
そこで、それらの課題を解決できる産後ケアが人口政策に寄与することもあるでしょうし、街づくりにも貢献できるのではないかと。母親の妊娠期から子供の小学校入学まで、担当の保健師が子育てに関するあらゆる相談にワンストップで応じるフィンランドの「ネウボラ」をモデルにして、日本でも同じことができるようにしたいと。
当院の事例を申しますと、16年に「産後ケアセンター いろは」を作りました。きっかけは牛久市が同年4月から産後ケア事業を始め、当院が事業を受託したことが最初です。牛久市が子育て世代包括支援センターを設け、その出張所とか支部のような位置づけで始まりました。
最初は病院のベッドを有効利用しようという考えもあり、実際に当院の産科病棟の一部を産後ケアセンターに当てました。利用者の方々からの評判も高く、分娩数も19年度は408回、20年度は353回になります。
牛久市市内在住者は「産後ケアセンター いろは」での宿泊が3食付きで5000円の自己負担で済む(写真は産後ケア部屋)