2021-05-09

アパホテル・元谷芙美子社長が語る”コロナ禍でのホテル黒字経営”

元谷芙美子・アパホテル社長

もとや・ふみこ
福井県福井市出身。福井県立藤島高校卒業後、家庭の事情で大学進学を諦め、地元の福井信用金庫に入社。22歳で結婚し、翌1971年、夫の元谷外志雄が興した信金開発株式会社(現アパ株式会社)の取締役に就任。94年アパホテル社長。2006年早稲田大学大学院公共経営研究科修士号を取得し、11年には同博士課程を修了。

夫でアパグループ創業者の元谷外志雄氏は代表。芙美子氏はアパホテルの社長を務め、同社はコロナ禍の今も拡大路線を敷く。ホテル業界では同業他社が赤字に陥っているのに対し、アパグループは黒字を確保。「所有と運営、そしてブランドの3つを自前でやっているのが当社の強み」と強調する。昨年にはいち早くコロナの無症状者・軽症者の受け入れを表明し、ホテル業界の新たな道筋を開いた。コロナ禍を生き抜く経営者の覚悟と今後の成長戦略とは。

過去5年間の経常利益の蓄積

 ─ コロナ禍でホテル・旅館業が大打撃を受ける中でアパグループは2020年11月期の連結決算で約9・5億円の最終黒字を実現しましたね。

 元谷 今までは3000万人規模の海外観光客のお客様が日本にいらっしゃいましたが、コロナでこれがほとんどゼロになりました。我々にとってもその影響は大きく、経常利益は前期比97%減となりましたが、我が社は黒字を計上することができました。

 当社は19年11月期までの過去5年間で平均330億円以上の経常利益を上げ、経常利益率も30%前後で推移。今年で創業50周年になりますが、その間、一度も赤字になりませんでした。この貯えがあったわけです。

 そして、アパグループでは直営ホテルのほとんどを所有しています。一般的なホテルでは、土地、建物の所有と運営、そしてブランドの3つがそれぞれ別の事業体で運営されていることが多いのですが、アパグループのホテルは全て自前になります。

 海外の有名なホテルチェーンも不動産の所有と運営、ブランドが別々になっており、ホテルの運営会社は不動産のオーナーに家賃を払ったり、ホテルチェーン本部に10%程度のロイヤリティを払ったりしています。しかし、我々はホテルを借りて運営したり、ブランドを借りてロイヤリティを払っているわけではありませんから、それだけ収益力は高くなります。

 ─ それでも未曽有の危機下を生き抜くには、それなりの備えが求められますが。

 元谷 これは代表(夫・元谷外志雄氏)がよく言っていたのですが、危機は大体10年ごとにやってくると。例えば、当社は今年で創業
50年になりますが、最初の危機は1970年代前半に起こったオイルショックでした。その後もバブル崩壊、耐震強度不足報道、リーマン・ショック、そして今回のコロナ危機。そういう気構えを持っていたことが危機管理につながったと。

 その結果、一度もホテルの新築計画を止めることなく続けることができました。さらに、コロナ禍でも当社は今年2月に旅行会社のホワイト・ベアーファミリーのグループ会社から「ホテルWBF新大阪スカイタワー」を買収し、「アパホテル〈新大阪駅タワー〉」として3月30日に開業しました。

 このようにコロナ禍でも4棟ほどのホテルを買収したことをはじめ、「頂上戦略」として打ち出した新築計画については、1つも止めることなく進めています。その結果、4月12日時点ではアパホテルネットワークとして建築・設計中、海外、フランチャイズ、パートナーホテルを含めて665ホテル、10万2708室にまで拡大しています。

 さらに、20年4月にスタートした「SUMMIT 5-Ⅲ(第三次頂上戦略)」では、25年3月末までに15万室の展開を目指しており、現在も27棟、1万376室を建築・設計中です。

 ─ 資金調達についてはどのように行っているのですか。

 元谷 メインバンクからは「どうぞお使いください」ということで、常に買収資金やプロジェクト資金の提案がありますし、大型チェーンの買収案件が出てくれば2000億~3000億円規模の資金は協調融資で用意しますと言っていただいています。その他にも過去の利益の蓄積で自己資金も豊富にありますので、お金は万全です。

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