本店を建て替えグループ一体の拠点に
─ 社会の大きな変化に対応することが求められますね。
半沢 私は銀行のトップですが、グループの総合力をしっかり活用していくことが重要だという問題意識を持っています。
その観点で三菱UFJ銀行の本館を建て替えて、MUFGの本館として、ここに持ち株会社、銀行、信託、証券が集約するような形にしたいと思っています。
そうすることで丸の内・大手町にある拠点のファシリティコストを引き下げることができると思っていますし、グループが一体的に揃うことで、お客様への提案をスピード感を持ってできるといった効果も期待できます。
─ これまで海外事業に注力してきましたが、今後はどのような姿勢で臨みますか。
半沢 従来はどちらかというと国内が低成長の中で、海外に成長を求めてきました。先程申し上げたようにアジアは引き続き成長しますし、成長を取り込んでいくべきだと思いますが、欧米は再び金利が下がりましたから、再構築をしなければならないのではないかと思います。
今回は国内業務にしっかり向き合って、そこでしっかり収益を上げるということに徹底的に取り組みたいと考えています。
─ デジタル化に関連して、今はITプラットフォーマーなど異業種が金融に入り込んできています。その中で、改めて銀行の役割をどう考えますか。
半沢 我々の捉え方は、まず自分たちのネットバンキングなどの強化はもちろん進めます。加えて、外部事業者との提携も考えていきます。
例えば、我々は様々なデータを持っていますが、それを外部事業者が持つ行動データと掛け合わせることで、お客様にとって最も適切なサービスを提案できるようにすることが必要になってきます。
また、その外部事業者のプラットフォーム上に我々のサービスを載せることで、お客様との接点を拡大し、活性化するという形で取り組んでいく必要があります。
我々だけで単独でできることは限られていますから、そこは外部事業者の皆さんと提携をして、しっかりやっていこうと思っています。
「一念天に通ず」を胸に置いて
─ ところで半沢さんはこれまで、主に企画畑を歩んできたわけですが、印象に残っている仕事は何ですか。
半沢 若い頃に、三菱信託銀行(現・三菱UFJ信託銀行)と一緒に持ち株会社をつくる時に関与させていただきました。当時は、まず一緒になることを優先し、例えば信託銀行さんが行っている融資業務を、どちらかに寄せたり、合理化をしない形の緩い統合から始まりました。
それを徐々に見直して、3年前に事業については基本的にグループベースで考える体制にカジを切り、そこで信託銀行の法人貸出を銀行に寄せ、役割分担と合理化をさらに進めるということに大きく踏み込みました。
その意味で、グループ経営の有り様を10年以上、経験させていただきました。今回、私が大きな責任を持つのは銀行経営ですが、グループの総合力を発揮しながらお客様に提案させていただくことに、効率的かつ強く取り組むことができるようになったことについて、最初の統合に関わった者として感慨深いものがあります。
─ MUFGの社長である亀澤さんとはどのようにコミュニケーションを取っていますか。
半沢 お互いに、課題があった時にはすぐに飛び込んで相談できます。また、現時点ではありませんが、今後グループと銀行とで意見が違うこともあり得ます。そういう時には時間をかけずに、一緒に打ち合わせの中に入って、その場で決めるという形で迅速に判断していきたいと思っています。
─ 大学を卒業する際に、銀行を志望した動機を聞かせて下さい。
半沢 私が卒業したのはバブル期で多くの企業が成長しているタイミングでした。そして銀行も証券業務を行うことが認められるような方向性が見えていましたから、主に中堅企業の成長を銀行、証券などグループ力でご支援できるということに魅力を感じました。この考えは間違っていなかったなと思います。
─ 入行から1年半後にバブルが崩壊し、銀行業界全体が苦しい時期に入っていきます。どういう気持ちで仕事をしていましたか。
半沢 バブル崩壊後は、不良債権をどう処理し、しっかり収益を上げられる銀行にできるかが目先の課題となりました。ただ、いま振り返れば我々は体力がありましたから、不良債権さえ処理すればV字回復できると思っていましたし、実際にできたのではないかと思っています。
─ 銀行に入って良かったなと実感したことは?
半沢 お客様に対していろいろな提案をさせていただき、それを認めていただいて、実際に効果が出て「ありがとう」と言ってもらった時は、やはり嬉しかったですね。
─ 改めて座右の銘を聞かせて下さい。
半沢 「一念天に通ず」という言葉です。自分が信念を持って取り組んでいれば、物事は実現できると、苦しい時に自分に言い聞かせてきました。