2021-04-30

「アルケゴス問題」で野村HDが損失、日米当局が調査へ

米投資会社「アルケゴス・キャピタル・マネジメント」によるハイリスク投資の失敗を巡り、国内外の大手金融機関が巨額損失懸念に揺れている。野村ホールディングスは4月27日の決算発表で約3100億円の損失であることを発表、クレディ・スイスは約5200億円の損失を被る恐れがあると公表した。

 アルケゴスは元ヘッジファンドの運用担当者のビル・ホワン氏が運営し、自己資金は100億㌦(約1・1兆円)程度とされる。取引先には、野村HDやクレディ・スイスのほか、米ゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレー、ドイツ銀行、スイスのUBSなど名だたる大手金融が名を連ねていた。

 今回の問題を巡っては、米証券取引委員会が既に調査に着手。米上院銀行住宅都市委員会のブラウン委員長(民主党)は野村HDなど金融機関4社に取引の詳細や内部管理体制の説明を求める質問状を送付した。

 欧州では英金融行為監督機構が市場関係者と協議するなど実態把握に乗り出している。金融庁と日銀も野村HDやメガバンクなどが取引に至った経緯やリスク管理体制の適切性を検証する方針。さらに、他の金融機関でも類似の取引やリスクがないか網羅的に点検する構えだ。

 米バイデン政権や与党民主党内では、ファミリーオフィスやスワップなどデリバティブ取引の規制強化論も噴出している。ただ、ファミリーオフィスの大半は富裕層が老後や相続に備えて自己資金を中長期に安定運用するもので、「ヘッジファンド並みの厳しい規制はなじまない」との見方も出ている。

 また、デリバティブに対する過度な規制は市場の流動性を低下させ、相場の乱高下を大きくするとの懸念もある。さらに、野村HD始め、大手金融機関は近年、リスクが高い自己トレーディング部門を縮小し、安定的な手数料収入が見込める富裕層ビジネスに注力してきただけに、規制強化が現実になれば業績への大きな痛手となる可能性もある。第2のアルケゴス封じをどう進めるか。日米欧の当局とも頭の痛いところだろう。

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