2021-04-16

東レ社長・日覺昭廣の「素材には、社会を本質的に変える力がある!」

日覺昭廣・東レ社長

産業構造の比重がモノからソフトへ移る中、モノづくりはどうあるべきか─。「素材には社会を本質的に変える力がある」が持論の東レ社長・日覺昭廣氏。コロナ対策として医療用ガウン、重症患者治療の血液浄化器なども手がけながら、中長期レンジでの新領域開拓が進む。例えば、がん撲滅に向けて血液中のがん細胞検出、抗体医薬開発といった“ライフ・イノベーション”事業、また“グリーン・イノベーション”と名付けてのバイオマス由来の素材開発、さらには環境問題解決の切り札とされる水素エネルギー関連の素材開発とテーマは目白押し。将来に向け、社会にどう貢献していくかという成長戦略を組み立てつつ、コロナ危機下、足下の利益をどう確保するかという今日的課題を抱えての企業統治。そのためには、内外企業とのパートナーシップ、あるいは国(政府)との連携はいかにあるべきか。「日本発のビジネスモデルを創り出していく」と語る日覺氏のモノづくり論とは─。


検査体制の充実で国民に安心感を!

 コロナ禍、政府による2度目の緊急事態宣言が3月21日解除された途端に感染者の拡大。東京、大阪の大都市で感染者数が増加基調、さらには仙台、松山市など地方の中核都市で急増するなどの状況に、『第4波』の襲来だと指摘する専門家もいる。

 コロナ禍が起きて1年数か月、いま何が必要か?

 コロナ危機対応への本質的な問題として、「わたしは、徹底的に検査ができる体制をつくることが、安心感をつくる上で大事なのではないかと思います」と東レ社長・日覺昭廣氏は語る。

「陽性なのに無症状で元気な人が動き回っているのは、最初から確認されていましたからね。人にうつすのを喰い止めるには、検査体制をよくしていくしかないのではないか」

 インフルエンザから、致死率の高いエボラ出血熱まで感染症は一般的に発症したら、患者は、動かさないようにして、感染が広がるのを防ぐ。

 新型コロナが厄介なのは、発症前から他の人にうつしてしまうケースが多いこと。

 昨春、第1回の緊急事態宣言が発令された時も、この事は起きていた。昨年5月、北九州で20人の陽性患者が見つかったが、19人が無症状という事例。

「だからこそ、徹底した検査が必要。ある意味でホテル隔離、または自宅での自主隔離でいいんですよ。政策をしっかりやれば、おそらく医療崩壊も起こらないと思うし、日本の医療機関は世界1多いんですよね」

 要は、ファクト(事実)やデータに基づいての対策づくりが大事だということ。

 今回のコロナ禍では医療関係者の健闘には多くの国民が感謝している。そうした医師や看護師が疲弊し、医療崩壊となるのを防ぐには、保健所・公的病院と民間病院の連携も必要で、工夫の余地はある。

 もっと言えば、民間の出番があっていいのではないかということである。

本誌主幹・村田博文

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