2021-04-19

日本病院会・相澤孝夫会長が語る”なぜ「松本モデル」が成功したか?”

相澤孝夫・日本病院会会長(相澤病院最高経営責任者)

あいざわ・たかお
1947年長野県松本市生まれ。73年東京慈恵会医科大学卒業後、信州大学医学部附属病院勤務(内科学第二講座)を経て、88年社会福祉法人恵清会理事長。94年社会医療法人慈泉会 相澤病院理事長・院長就任。2008年社会医療法人財団 慈泉会相澤病院理事長・院長。17年に院長を退任し、現在は社会医療法人財団慈泉会理事長、相澤病院最高経営責任者。同年日本病院会会長。

≪インタビューは3月11日に実施≫

医療逼迫と言われるが、「しっかりとしたデータに基づいた議論が必要だ」と警鐘を鳴らすのは日本病院会会長で長野県松本市にある相澤病院の最高経営責任者・相澤孝夫氏だ。例えば、コロナの重症化率も低いことが判明しており、それに基づいた医療体制が求められる。同氏は3市5村で形成する「松本モデル」について「普段から連携を進めてきた」と語る。相澤氏が語る公立病院と民間病院の連携の姿とは?

重症化リスクが低下

 ─ 病院の持続的な発展を目指す中で、足元の医療現場をどう見ていますか。

 相澤 日々、コロナウイルスに対する様々なデータが出てきているのですが、最初の頃のデータと今のデータは随分違ってきています。例えば、重症化する人の割合を見てみると、昨年1月から4月の間は9・8%と言われていましたが、6月から8月のデータでは1・62%しかありません。それだけ重症化リスクが低いということです。

 重症化した患者さんは集中治療室に入って人工呼吸器で治療を受けますが、その重症化率が1割と思われていたのが、現実には1・
62%しかいないと。そうすると、必要なベッド数も変わってきますね。毎日何人の方が新たに感染し、そのうちの何人の方が重症化するかと考えた場合、毎日1千人いたとしても重症化した患者さんは16・2人という計算です。

 そして重症化した患者さんの治療には15日くらいかかると言われていますので、16・2人×15日というのが必要なベッド数になります。ですから、感染者数が1千人から減って500人になれば、ベッドはその半分で済みますし、もっと減って100人になれば、1千人のときの10分の1になるわけです。

 したがって、細かい数字をたくさん公表するよりも、新規の感染者数を減らすことが重要になります。感染者数を減らすことができれば、当然、医療現場の逼迫もなくなります。また、治療法が改善して重症でいる期間が短くなれば、重症者のベッドはもっと少なくて済みます。

 ただし、これは大雑把な計算で、年齢によって重症化の比率が異なりますから、どういう年齢の方が1日平均何人いらっしゃるかによって必要なベッド数も変わってきます。例えば90歳以上の人の重症化率は16・64%。ですから、90歳以上の方が毎日どれくらい新規の感染者になっているかによっても、90歳以上の方に必要な重症ベッド数も決まってくるわけです。

 こういう計算を積み重ねていくと共に、治療法の進歩や国民の努力によって随分今は新規の感染者数が減ってきていますので、多分医療現場の逼迫というのは、相当和らいでいるというふうに思います。ベッド数を計算することによって、すぐに予測がつくということです。

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