2021-04-20

トヨタ自動車・内山田竹志会長が語る”水素の未来と課題”

内山田竹志・トヨタ自動車会長

うちやまだ・たけし
1946年愛知県生まれ。69年名古屋大学工学部卒業後、トヨタ自動車工業(現トヨタ自動車)入社。94年初代「プリウス」開発責任者、98年取締役、2001年常務、03年専務、05年副社長、12年副会長などを経て、13年より現職。

「母国である日本で新たなエネルギーを成り立たせて世界にも広げていく」と強調するのはトヨタ自動車会長の内山田竹志氏だ。石油の時代が終わりを告げ、世界各国がカーボンニュートラルを掲げて新たな競争を始めている。究極のエネルギーと言われる水素では、かつて日本は先進国だったが、今では欧州に後れを取る。自動車業界でも電動化という流れがある中で、同社は水素バリューチェーン推進協議会を結成。国際競争で日本が戦っていくための下地づくりを始めている。日本が世界に勝つための方策とは?

21世紀のクルマ社会の問題

 ── 地球温暖化問題に対し、自動車産業がどう絡むか。その観点で考えを聞かせてください。

 内山田 足元では世界中の自動車メーカーが電動化に向かって商品提供や開発をしていますが、実はトヨタはかなり早くからこの問題に着手していました。きっかけは1997年に発売したハイブリッド車(HV)「プリウス」の開発になります。

 このときトップから言われたのは「21世紀のクルマを作れ」。21世紀のクルマと言っても、それはどんなクルマなのか。このコンセプトをはっきりさせようということで辿り着いたのが、21世紀のクルマ社会の課題を一つでも解決するクルマです。ただし、クルマの利便性は最低限維持しようということでした。

 ── 同時にクルマとしての利便性は失ってはいけないと。

 内山田 そうです。トレードオフではありません。そして21世紀のクルマ社会の問題とは何か。交通事故やドライバーの高齢化などいろいろありましたが、我々は資源・環境問題は避けて通れないと考えました。

 当時の自動車業界では、まだ真正面から画期的にやるというレベルではありませんでしたが、ガソリンの消費量を減らすため、燃費性能を圧倒的に高め、あわせて排出ガスを削減する技術としてハイブリッドを開発したわけです。

 そこから会社としてもサステナビリティをはじめ、資源・環境問題に対し本格的に取り組むようになります。その後、電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)の「ミライ」を発売したわけです。そして2015年に「トヨタ環境チャレンジ2050」を公表しました。

 ── この骨子は?

 内山田 これから我々は6つのチャレンジをしますという宣言です。そのうちの3つはゼロにするチャレンジ。具体的には新車からCO2を出さない、工場でCO2を出さない、車のライフサイクルでCO2を出さないです。まさにいまカーボンニュートラル宣言で大々的に取り組んでいることに目掛けて当社は動いていたということです。

 ── 自動車業界でのCO2の現状はどうなっていますか。

 内山田 日本でも世界でも運輸部門がCO2排出の約20%を占めています。運輸部門には船や飛行機なども含まれているのですが、量的には自動車が多い。したがって、世界各国で燃費規制が非常に厳しくなっています。この規制値も厳しいもので、客観的に見ても今のままでは規制を達成するのは難しいのではないかと思います。ただ、自動車以外の領域では各国バラバラです。例えばEUは再生可能エネルギー化を進めていますが、再エネを柱にしていない国もあってまだら模様です。

 ところがその中で政治主導によるゼロエミッション車(ZEV)の発売義務化が進みます。中国や米カリフォルニア州、欧州の一部の国々では販売量の一定量はZEVにしなさいというものです。さらにはある時期からはガソリンやディーゼルエンジンだけで走る車の販売禁止、挙句にはHVも禁止するという動きが出てきました。

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