2021-04-15

【農林水産省】米国産牛肉に緊急輸入制限を発動

写真はイメージ

政府は3月18日、米国産牛肉に対し緊急輸入制限(セーフガード)を発動した。2020年度の輸入量が3月上旬時点で、基準数量(24万2千㌧)を229トン上回ったことを踏まえた措置。関税率は25・8%から38・5%に上がった。今後は日米協議の動向が焦点となる。

 期間は4月16日までの30日間。米産などの冷凍牛肉に適用した前回の2017年は8カ月間に比べて短い上、商社や外食などは発動を見越して在庫を確保しているため「国民生活に大きな影響があるとは考えにくい」(野上浩太郎農林水産相)との見方が大勢を占める。

 20年1月に発効した日米貿易協定は基準を一層高いものに調整するため、発動後10日以内に協議を始め、90日以内に終えると定めている。

 日本の交渉相手となる米通商代表部(USTR)のキャサリン・タイ氏は代表に就任したばかり。日本の交渉関係者は「米国の出方が読めない」と表情を曇らせる。政府・与党は「どんな高い球を投げてくるのか分からない」(自民党農林族重鎮)と警戒を強める。

 自民党関係者からは、米産牛肉の輸入量が毎年のように発動基準を超過し、その都度数量が上積みされるのではとの懸念が聞かれる。ある農林族議員は「米国を環太平洋連携協定(TPP)に復帰させることが日米双方にメリットだ」と強調する。 オーストラリアなどが参加するTPPの牛肉セーフガード発動基準数量は、離脱した米国の分も含んだままで相当余裕がある。その枠の中に米国を加えれば、同国が輸出をさらに伸ばす余地も生まれる。しかも、日本にとってはセーフガードが発動する可能性も抑えられ、上方修正の圧力にさらされない。

 日米交渉を担うのは茂木敏充外相。茂木氏周辺は「外相の頭の中にも米国をTPPに戻す交渉は選択肢にあるはず」と指摘。その上で「米国の加盟が実現すれば一気に首相の座に近づくだろう」と茂木氏の手腕に期待を寄せている。

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